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四国八十八ヶ所 ・ 愛媛県(伊予・菩提の道場)

第52番 龍雲山 護持院 太山寺

真言しんごん密教で最大級の国宝本堂と、十一面観音七躯を伝える。一夜建立の伝承を持つ伊予の名刹 御本尊ごほんぞんは十一面観世音菩薩です。 愛媛県・伊予の第52番札所ふだしょです。
第52番 龍雲山 護持院 太山寺 境内
境内(Dokudami / CC BY-SA 4.0)
第52番

太山寺

本尊十一面観世音菩薩

おん まか きゃろにきゃ そわか

御詠歌太山へのぼれば汗のいでけれど 後の世思へば何の苦もなし

愛媛県・伊予菩提の道場真言宗智山派
はじめての方へ|この記事に出てくる言葉
本尊ほんぞん
そのお寺がいちばん大切におまつりする、中心の仏さま。
御真言ごしんごん
本尊に呼びかける、サンスクリットに由来する短い聖なる言葉。
御詠歌ごえいか
その札所をたたえ、巡る心をうたった和歌。
縁起えんぎ
そのお寺の始まりや、いわれを伝える言い伝え。
札所ふだしょ
お参りするお寺のこと。四国遍路では四国八十八ヶ所をめぐる。
大師堂だいしどう
弘法大師(お大師さま)をおまつりするお堂。本堂とあわせてお参りする。
奥の院おくのいん
札所の近くにある、もう一つの聖地。旧境内や、大師が修行したと伝わる岩や滝など。
結願けちがん
八十八ヶ所すべてを巡り終えること。「満願まんがん」ともいう。
四つの道場
四国の四県を、心の旅の四段階になぞらえた呼び名。阿波=発心ほっしん、土佐=修行しゅぎょう、伊予=菩提ぼだい、讃岐=涅槃ねはん。

 

  1. 縁起と歴史
  2. 見どころ・伽藍
  3. 信仰と物語
  4. 参拝の手引き
  5. 出典

八十八ヶ所のなかの位置

徳島県発心の道場1〜23
高知県修行の道場24〜39
愛媛県菩提の道場40〜65
香川県涅槃の道場66〜88
52

八十八ヶ所の道のりで、第52番は 愛媛県(伊予・菩提の道場)にあります。阿波23・土佐16・伊予26・讃岐23ヶ寺のうち、全体では52番目です。

第52番は愛媛県・菩提の道場。
十一面観音(十一面観音像(国宝・法起寺伝来))
「十一面観音像」(国宝・法起寺伝来)奈良国立博物館蔵 出典: Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
所在地〒799-2662 愛媛県松山市太山寺町1730
前後の札所前の第51番石手寺から約5.5km(太山寺道は登り)。次の第53番円明寺へ約4.5km。
この寺の成り立ち

縁起と歴史

太山寺は、松山市街から太山寺町へ続く長い参道を登った先に建つ。開基とされる真野長者の「一夜建立」の伝承で知られる。長者は豊後(大分)で炭焼きをしていたが、神のお告げで久我大臣の娘・王津姫と結婚し、大富豪となった。用明2年(587年)、大阪へ商いに向かう途上で大暴風雨に遭い、観音に祈願して高浜の岸で救われた。その報恩のため豊後の工匠を集め、間口66尺・奥行81尺の本堂の木組みを船に積んで運び、順風で高浜に着くと、夜を徹して組み上げ、朝日とともに本堂が建ち上がったと伝わる。天平11年(739年)には聖武天皇の勅願ちょくがんを受け、行基ぎょうき菩薩が十一面観音像を彫り、真野長者が瀧雲山(龍雲山)で見つけた小さな観音像を胎内に納めて本尊ほんぞんとしたともいう。孝謙天皇のころには七堂伽藍がらんと66坊を数えるほど栄え、弘法大師こうぼうだいしは天長年間(824〜834年)に護摩供を修して真言宗しんごんしゅうに改宗したと伝わる。後冷泉天皇をはじめ6代の天皇が、同型の十一面観音像を奉納したという。現在の本堂は嘉元3年(1305年)の再建で、真言密教では最大規模を誇り、国宝に指定されている。

弘法大師との関わり

弘法大師こうぼうだいしは晩年の天長年間(824〜834年)に太山寺を訪れ、護摩供を修したと伝わる。それまでの法相宗から真言宗しんごんしゅうに改宗したともいう。伊予の菩提ぼだいの道場における観音信仰と密教修法の中心地として、後の隆盛の基礎を築いたとされる。

おもな歴史
  • 用明2年(587年):真野長者が一夜にして御堂を建てたと伝わる(伝承)
  • 天平11年(739年):行基ぎょうき菩薩が十一面観音像を彫り、小像を胎内に納めたと伝わる(伝承)
  • 749年頃:孝謙天皇の勅願ちょくがん所として伽藍がらんが整えられたと伝わる
  • 824〜834年:弘法大師こうぼうだいしが護摩供を修し、真言宗しんごんしゅうに改宗したと伝わる
  • 嘉元3年(1305年):松山城主・河野家の寄進により現本堂を再建
  • 明治37年(1904年):本堂・仁王門におうもんを重要文化財(当時の特別保護建造物)に指定
  • 昭和31年(1956年):本堂を国宝に指定。修理工事報告書が作成される
  • 昭和32年(1957年):木造十一面観音立像(本尊ほんぞんほか)を重要文化財に指定
  • 2014年:本尊十一面観音立像が開帳(次回開帳は2064年とされる)
お参りの前に

見どころ・伽藍

この札所の見どころ
  • 国宝本堂嘉元3年(1305年)建立。桁行7間・梁間9間の入母屋造本瓦葺き。真言しんごん密教で最大級
  • 仁王門におうもん鎌倉時代再建の3間8脚門。国指定重要文化財
  • 十一面観音七躯本尊ほんぞん1躯と歴代天皇奉納6躯。いずれも像高150センチ前後の秘仏で、国の重要文化財
  • 一夜建立真野長者の伝承。船で運んだ木組みを一晩で組み上げた御堂
  • 聖徳太子堂伊予を訪れた太子との縁にちなみ、法隆寺夢殿と同型の太子像を祀る
  • 最古の木製納札安永9年(1780年)の銘を持つ
伽藍・主要堂宇
  • 仁王門(二王門)をくぐり、長い参道を登ると本堂に着く。本堂は嘉元3年(1305年)に松山城主・河野家が寄進した再建で、桁行7間・梁間9間の入母屋造本瓦葺き。和様・唐様・天竺様を折衷した国宝建造物で、真言しんごん密教の寺院としては最大級の規模を誇る。
  • 本堂の内陣には横長の宮殿厨子が安置され、その中に本尊ほんぞんの十一面観音立像と、後冷泉・後三条・堀河・鳥羽・崇徳・近衛の各天皇が奉納した6躯の十一面観音立像が祀られる。いずれも秘仏で、50年に一度の開帳とされる(2014年に開帳、次回は2064年)。
  • 仁王門におうもんは本堂と同じ鎌倉時代の再建で、3間8脚門・入母屋造本瓦葺き。国の重要文化財。
  • 聖徳太子堂には、伊予を訪れた太子との縁にちなみ、法隆寺夢殿と同型の太子像を安置する。
  • 境内には長者堂、大師堂だいしどう、一畑薬師堂、鐘楼しょうろうなどが並ぶ。鐘楼の壁面に描かれた地獄・極楽の絵図も見どころとされる。
奥の院・霊跡
  • 真野長者が瀧雲山(龍雲山)で見つけた小さな観音像を、行基ぎょうき作の大像の胎内に納めたという縁起えんぎが伝わる。
文化財・寺宝
  • 太山寺本堂:国宝。嘉元3年(1305年)建立、入母屋造本瓦葺き。昭和31年(1956年)国宝指定
  • 太山寺二王門(仁王門におうもん):国指定重要文化財。鎌倉時代、3間8脚門
  • 木造十一面観音立像1躯:国指定重要文化財。本尊ほんぞんで秘仏、像高155.4センチ、平安時代作
  • 木造十一面観音立像6躯:国指定重要文化財。歴代天皇の奉納と伝わる
  • 算額:松山市指定有形民俗文化財
  • 史跡・名勝・重要文化的景観選定候補(世界遺産提案書):いずれも○。国宝本堂
  • OUV特記:国宝本堂
伝わるもの

信仰と物語

御本尊と信仰
  • 本尊ほんぞんの十一面観世音菩薩は秘仏。行基ぎょうき作と伝わり、真野長者が見つけた小像を胎内に納めたという。
  • 6代の天皇が奉納した像とともに本堂の厨子に安置され、朝廷との深い関係を示す。
  • 御詠歌ごえいかは、険しい登りの苦労を後生の救いに換えて詠み、太山寺参詣の労を励ます歌として知られる。
伝説・説話
  • 真野長者の一夜建立:木組みを船で運び、一晩で本堂を建て上げたという伝承。
  • 暴風雨の海で観音に救われた長者が、報恩のため寺を建てたという縁起えんぎ。
  • 用明2年(587年)の創建説や、天平11年(739年)の行基ぎょうき彫造説など、年代に諸説がある。
文学・和歌
  • 御詠歌ごえいか「太山へのぼれば汗のいでけれど 後の世思へば何の苦もなし」
  • 太山寺町へ続く長い登り参道は、遍路へんろの体力と意志を試す区間として知られる。
  • 御詠歌は四国霊場れいじょう会の札所ふだしょ案内や納経のうきょう帳などで広く流通し、巡礼の道中で唱えられる。
ゆかりの人物
  • 真野長者:開基と伝わる。
  • 行基ぎょうき菩薩:十一面観音像を彫造したと伝わる。
  • 弘法大師こうぼうだいし:天長年間に護摩供を修し、真言宗しんごんしゅうに改宗したと伝わる。
  • 河野氏:嘉元3年の本堂再建の寄進者。
  • 後冷泉天皇ほか6代の天皇:十一面観音像を奉納したと伝わる。
訪ねる方へ

参拝の手引き

年中行事
  • 年中行事は霊場れいじょう会公式サイトを参照
参拝の実際
  • 駐車場:あり(無料)
  • 参道は長く、登りが続く。仁王門におうもんから本堂まで距離がある
  • 本尊ほんぞん・奉納像は秘仏のため、通常は厨子の外からの拝観となる
  • 宿坊:なし
周辺・遍路道
  • 前の第51番石手寺から約5.5km(太山寺道は登り)。次の第53番円明寺へ約4.5km。
  • 松山自動車道「松山IC」から国道33号・南環状線・国道196号を進み、内宮交差点を左折して直進。
アクセス
  • 〒799-2662 愛媛県松山市太山寺町1730
公式・関連リンク
  • 四国八十八ヶ所霊場会ページ
  • 霊場会
この記事の拠りどころ

出典

本文の確認に用いた公開資料と、札所別研究記録に記載された書誌情報です。公開本文のURLを確認できた資料はリンクし、書誌情報のみ確認できたものはその旨を明記しています。

第52番 龍雲山 護持院 太山寺|(一社)四国八十八ヶ所霊場会(公式霊場案内)
Wikipedia「太山寺 (松山市)」(日本語版)
『四国八十八ヶ所霊場先達教典』((一社)四国八十八ヶ所霊場会編・2006年|書誌情報)
宮﨑建樹『四国遍路ひとり歩き同行二人 解説編』第8版(へんろみち保存協力会・2017年|国立国会図書館書誌)
上野進「四国遍路と札所寺院―香川県の札所寺院調査から―」(『四国遍路と世界の巡礼』5・2020年|愛媛大学リポジトリ)
四国遍路総合研究(霊場資料学)(科学研究費助成事業 KAKEN23K20107|研究課題・成果一覧)
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