お盆の始まり
母を想う息子の物語
お盆の始まりには、一つの親子の物語があります。
お釈迦様の弟子・目連尊者は、修行で得た神通力で亡き母の姿を探しました。すると母は餓鬼道という苦しい世界にいて、食べ物が口に入る瞬間に炎になってしまい、飢えと渇きに苦しんでいました。
母を救いたい一心で、目連はお釈迦様に助けを求めました。
「どうか母を救う方法を教えてください」
お釈迦様は言いました。
「修行期間である夏安居(げあんご)の最終日、7月15日に、修行を終えた清浄な僧侶たちに食事を振る舞い、その功徳を母に回向しなさい」
目連が教えの通りに供養すると、母は苦しみから解放されました。喜んだ目連が踊ったのが盆踊りの始まりと伝えられています。また、平安時代の空也上人による念仏踊りが起源であるという説もあり、これらが結びついて現在の盆踊りの形になったと考えられています。
この話は『盂蘭盆経』という仏典に記され、平安時代に日本に伝わりました。宮中行事から始まり、江戸時代には庶民にも広がったお盆。多くの人に愛されたのは、親を想う気持ちや家族への愛という、誰もが持つ感情が込められているからです。
お盆は、家族を大切に思う心と、ご先祖様への感謝の気持ちから生まれた文化といえるでしょう。