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読みもの

毘沙門天とは

福を得て、人へ回す天

甲冑をまとい、片手に宝塔をかかげる武装の天、毘沙門天。北方を護る多聞天と同じ尊でありながら、福徳の神、勝運の神としても親しまれてきました。守る力と、財をもたらす力は、どこで一つになるのでしょう。経文に表れる三つの誓いと、「得た福を人へ回す」という教えから、その答えをたどります。
毘沙門天(多聞天)のお姿

 

  1. 毘沙門天とは
  2. 経文に表れる三つの誓い
  3. お姿と持物
  4. ご利益と、福を回す心
  5. 吉祥天・善膩師童子と祀る姿
  6. 護国の誓いを説く経典
  7. 真言宗・密教における位置づけ
  8. おとなえする真言
  9. 日本での信仰
  10. 平等寺の毘沙門天
  11. よくあるご質問
  12. 参考文献・出典
概要

毘沙門天とは

人に安楽を、暮らしに財を、国土に護りを。経文から、毘沙門天の三つの誓いが見えてきます。

毘沙門天びしゃもんてんと多聞天たもんてんは、同じ天の二つの呼び名です。仏の世界を東西南北から護る四尊の天を四天王といい、その北方を受け持ちます。日本では一般に、四天王の一尊としては多聞天、単独で信仰されるときは毘沙門天と呼ばれることが多くあります。

天てんとは、仏法を護る神々のことです。毘沙門天はそのなかでも、武運と福徳をあわせもつ天として古くから日本で親しまれ、福をもたらす七柱の神仏をあわせ祀る七福神にも、その一尊として迎えられました。

梵語ではヴァイシュラヴァナ(Vaiśravaṇa)。「あまねく聞こえる(名高い)」の意に解されてきた名で、漢訳の「多聞」はこの「聞」を受けた訳語です。インド神話では富の神クベーラの別名とされ、財宝と福徳をつかさどる性格は、この系譜を受け継いでいます。

誓願

経文に表れる三つの誓い

本誓ほんぜいとは、仏や天がみずから立てた根本の誓いのことです。『毘沙門天王経』の言葉からは、人を安らかにし、財を豊かにし、国土を護るという三つのはたらきを読み取れます。

『毘沙門天王経びしゃもんてんのうきょう』の冒頭に、毘沙門天が仏の御前へ進み出て、人々のために自らの真言を説かせてほしいと願い出る場面があります。その願い出の言葉に、三つの誓いがそのまま揃っています。

経典の言葉(本誓・書き下し)

日本語訳
世尊よ。わたしは未来の衆生に利益と安楽をもたらし、財宝を豊かにし、国土を護るために、みずからの真言を説きます。わたしのこの真言は、まことの如意宝珠(マニ宝珠)の王のように、もろもろの願いを満たします。
原文
世尊、我れ未来の諸有情等の利益安楽、豊饒の財宝、国界を護持せんが為の故に、自らの真言を説かん。我が此の真言は、真の摩尼宝王の如く、能く衆願を満てん。
出典
不空訳『毘沙門天王経』(大正蔵 No.1244)
補足

「利益安楽」「豊饒財宝」「護持国界」。経典自体がこれを「三本誓」と数え上げるわけではありませんが、人を安らかにし、財をもたらし、国土を護る三つの願いが、一続きの言葉に揃っています。毘沙門天の性格が、ここに端的にあらわれています。

お姿

お姿と持物

毘沙門天は、甲冑をまとう武装の天として表されます。きびしい面持ちで、片手に宝塔ほうとうを、もう片手に宝棒や戟げきを執り、足下に邪鬼じゃきを踏むのが基本のお姿です。

とりわけ宝塔は、毘沙門天ならではの持物です。宝塔とは、お釈迦さまの遺骨(仏舎利)を納める塔のこと。塔は仏法そのものを指し示すしるしでもあり、それを高くささげ持つ姿が、仏の教えを護るこの天の役目をあらわしています。

宝塔

仏舎利と仏法をささげ持つ塔。毘沙門天の最も特徴的な持物です。経には、この塔を「普集功徳微妙宝塔ふしゅうくどくみみょうほうとう」と名づけ、その内に八万四千の法蔵を納めると説かれます。

宝棒・戟

邪を打ち払う武器。鉾ほこや戟の形であらわされ、武神・守護神としての力を示します。

兜跋とばつ毘沙門天

大地の女神である地天女じてんにょが両手で足を支え、尼藍婆にらんば・毘藍婆びらんばという二鬼を従える異国風のお姿。足下の三尊の名まで漢訳の儀軌に説かれた姿で、毘沙門天信仰の篤かった西域の面影を伝えます。京都・東寺の国宝像は、平安京の正門 羅城門の楼上に、都の守りとして安置されたと伝わります。

補足

兜跋のお姿は、彫像だけの意匠ではありません。小野流の事相書『祕鈔ひしょう』は、地天が脚を承け、二部の薬叉が足を扶ける毘沙門天を道場に観想すると伝えます。ただし、その注釈『祕鈔口决ひしょうくけつ』は、地天が脚を承けるのは兜跋のお姿のことで、ほかの毘沙門天がかならずそうなのではない、と念を押しています。同じ注釈は、宝塔を毘沙門天の三昧耶形さんまやぎょう(尊の本誓を象徴するかたち)としたうえで、左手の塔と右手の棒を一対に見て塔を理、棒を智とし、さらに毘沙門天の身そのものが塔であると説く口伝も収めます。三昧耶形に宝塔と宝棒の二つを挙げる本もあります。

利益

ご利益と、福を回す心

毘沙門天のご利益は、経文に表れる三つの誓いを、日本の人びとがそれぞれの暮らしの祈りとして受け取ってきたものです。

国土守護から、武運・勝運の祈りへ

経典では、怨敵を退けて正法と国土を護る、四天王としての誓いが説かれます。日本ではこの守護の信仰が武運や勝運の祈りへ広がりました。聖徳太子が戦勝を祈ったと伝わる信貴山の縁起も、その展開の一つです。

金運・財福(豊饒財宝の誓い)

如意宝珠にょいほうじゅ(意のままに宝を生む珠)を源として、人々に財をもたらすと説かれます。商いの発展とともに、福の神として広く親しまれてきました。

安楽と運気の増益(利益安楽の誓い)

心身を安らかにし、威光・寿命・福力を増し益すはたらきと説かれます。

補足

福を願う祈りを、経典は否定しません。そのうえで『毘沙門天王経』は、得た財を自らの用のほかは施しに回し、物惜しみせず、一切の人に大慈の心を起こせと説きます。密教の事相書にも、毘沙門天に帰依するには、まず法を興し人を利する願を発せよ、と説く口決が伝わります(『行林抄』)。福は自分のところで止めず、人へ回す。それが毘沙門天の福徳です。

毎月1日の毘沙門天護摩(解説)
三尊

吉祥天・善膩師童子と祀る姿

毘沙門天は、家族とともに祀られることがあります。妃とされる吉祥天きっしょうてんと、王子の善膩師童子ぜんにしどうじを両脇に置く、毘沙門三尊のかたちです。吉祥天を毘沙門天の妃とするのは仏教の伝えで、インドの神話では、同じ女神(ラクシュミー)はヴィシュヌ神の妃とされます。

『金光明最勝王経こんこうみょうさいしょうおうきょう』には、毘沙門天みずからが、中央の仏の左に吉祥天女、右に多聞天を描くよう説く画像法があります。この古い経説からも、毘沙門天と吉祥天の近さがうかがえます。ただし、善膩師童子を含む現在の毘沙門三尊そのものを直接定めた一節ではありません。

経典の言葉(三尊のもとになった画像法・書き下し)

日本語訳
世尊よ。真言を保つ人が、わたし自身のあらわれる姿を見たいと願うなら、月の八日か十五日に、白い布の上に仏のお姿を描きなさい。膠にかわと彩色で美しく飾り、描く人は、そのために八戒(八つの戒め)を受けます。仏の左には吉祥天女の像を、右にはわたし多聞天の像を描き、あわせて男女の眷属たちも描きなさい。
原文
世尊、若し呪を持つ時、我が自身の現ずるを見んと欲せば、月の八日或いは十五日に、白疊びゃくじょうの上に仏の形像を画くべし。当に木膠もっこうと雑彩とを用いて荘飾すべし。其の画像の人は、為に八戒を受く。仏の左辺には吉祥天女の像を作り、仏の右辺には我が多聞天の像を作り、并せて男女の眷属の類を画け。
解説
「我」と語っているのは多聞天(毘沙門天)自身です。眷属けんぞくは、つき従う一族のことです。
出典
義浄訳『金光明最勝王経』巻第六「四天王護国品」(大正蔵 No.665、0431b)
補足

王子の善膩師童子も、同じ品に登場します。三宝を供養したくても財の乏しい人のために、善膩師がとりつぎ、父の毘沙門天が、日ごとに百の銭をその人へ与えると約束する物語です。真言宗の毘沙門天法でも、毘沙門天の前に如意宝珠から吉祥天女を観想し、はじめから弘い誓いを起こして余すところなくすべての衆生を救いとる、とその徳を結ぶと『祕鈔』は伝えます。三尊は、彫像のうえだけのかたちではありません。興然こうねんの事相書『五十卷鈔ごじっかんしょう』によれば、毘沙門天護摩は五つの段に組み、その部主ぶしゅ(その部を統べる尊)の段に吉祥天を立て、念誦には毘沙門天の真言に続けて吉祥天と善膩師童子の真言を数えます。父と妃と子を一具に祈る形が、修法の次第そのものに組まれていました。

経典

護国の誓いを説く経典

毘沙門天を説くおもな経典は、本誓を説く『毘沙門天王経』と、四天王の護国を説く『金光明最勝王経』です。後者の「四天王護国品」には、四天王が仏の御前で、この経を大切にする王と人々をかならず護ると誓う場面があります。

経典の言葉(護国の誓い・書き下し)

日本語訳
世尊よ。もしその国の王が、この経を受け持つ出家・在家の人々を見て、父母のように敬い守り、必要とするものをすべて与えるなら、わたしたち四王はつねに守護し、人々がその人を敬わずにいることのないようにします。そのためにわたしたちは、数えきれない夜叉や神々とともに、この経の広まるところへつき従い、姿を隠して護り、さまたげが起こらないようにします。またこの経を聴く人や国の王たちを護り、その衰えや患いを除いて安らかにし、他国の怨敵もみな退散させましょう。
原文
世尊、若し彼の国王、四衆の此の経を受持する者を見て、恭敬し守護すること猶お父母の如く、一切の須うる所を悉く皆な供給せば、我等四王、常に守護を為し、諸の有情をして尊敬せざること無からしめん。是の故に我等、無量の薬叉・諸神と并びに、此の経王の流布する所に随いて、身を潜めて擁護し、留難無からしめん。亦た当に是の経を聴く人、諸の国王等を護念し、其の衰患を除き、悉く安隠ならしめ、他方の怨賊をば皆な退散せしむべし。
出典
義浄訳『金光明最勝王経』巻第六「四天王護国品」(大正蔵 No.665)
補足

ここで直接説かれるのは、正法を大切にする王と国土を護る誓いです。この護国の信仰が、日本では武運や必勝の祈りへ展開しました。同じ品の別の段には、尊貴と財利をかなえる福徳のはたらきも説かれます。

真言宗

真言宗・密教における位置づけ

毘沙門天は、四天王の北方を担う天として、仏法と国土を護る守護神と重んじられてきました。中国から経典と像が伝わると、日本では早くから一尊だけでも祀られ、武運と福徳の本尊となりました。

唐代の密教では、不空ふくうが訳した『毘沙門天王経』をはじめ、毘沙門天の真言・印・念誦の法や画像の法が整えられました。唐ではまた、敵に囲まれた辺境の安西城を、不空の祈祷にこたえて毘沙門天の天兵が救った、という霊験譚が語られました(伝不空訳『毘沙門儀軌』の縁起)。史実の記録ではなく護国の説話ですが、国を護る天としての信仰が唐でどれほど篤かったかを伝えています。

福徳や威徳を増す修法を、密教では増益そうやくといいます。災いを鎮める息災、悪しきものを退ける調伏などと並ぶ、修法の分類の一つです。毘沙門天は、如意宝珠を根本に置く福徳の祈りのなかで、福徳と威徳を増す増益の祈りの本尊とされてきました。

その裏づけは、経典のなかの毘沙門天(多聞天)自身の言葉にあります。

経典の言葉(如意宝珠の法・書き下し)

日本語訳
世尊よ。わたしには如意宝珠の陀羅尼だらに(長い真言)の法があります。これを願って受け保つ人があれば、その功徳ははかりしれません。わたしはつねにその人を護り、苦を離れて楽を得させ、福と智の二つの糧を成しとげさせます。
原文
世尊、我に如意宝珠陀羅尼の法有り。若し衆生の楽ねがいて受持する者有らば、功徳無量なり。我れ常に擁護して、彼の衆生をして苦を離れ楽を得しめ、能く福智二種の資糧を成ぜしめん。
解説
資糧しりょうとは、仏道を歩むための糧のことです。福だけでなく、智慧とひとそろいで説かれています。
出典
義浄訳『金光明最勝王経』巻第六「四天王護国品」(大正蔵 No.665、0430c)
補足

密教の事相書は、妃とされる吉祥天を宝生尊ほうしょうそん(宝を生む徳をつかさどる如来)の分身とし、その法を息災増益の護摩に結びつけて伝えます。平等寺が毎月1日に修する毘沙門天護摩も、この増益の祈りにつらなります。

真言

おとなえする真言

毘沙門天の真言

おん ばいしらまんだや そわか

oṃ vaiśravaṇāya svāhā

「毘沙門天(ヴァイシュラヴァナ)よ」と帰依し、その加護の成就を祈る真言です。『毘沙門天王経』の真言のなかにも「吠室囉麼拏野娑嚩賀(ばいしらまんだや そわか)」の句があり、この真言の核が原典に裏づけられています。

日本での信仰

日本での信仰

毘沙門天は、武神・守護神として、また福の神として、日本各地で篤く信仰されてきました。その歩みは、奈良時代の四天王像にまでさかのぼります。

  • 信貴山 朝護孫子寺(奈良)。聖徳太子が物部守屋との戦いにのぞみ、戦勝を毘沙門天に祈ったと伝わる寺です。寅の年・寅の日・寅の刻に毘沙門天があらわれたという言い伝えから、寅を篤くまつります。
  • 鞍馬寺(京都)。都の北方を護る寺として平安京の人々に尊崇され、中世には福の神としての信仰が育ちました。室町のころには、寅の日に福を求めて参る人々が貴賤を問わず群れをなしたと当時の日記に残り、正月はじめの寅の日に参る「初寅参り」として後の世にも受け継がれました。
  • 東大寺戒壇院の四天王像(奈良)。北方の多聞天を含む、天平彫刻の名品です。
  • 七福神。福をもたらす七柱の神仏をあわせ祀る信仰で、室町のころから広まったとされます。毘沙門天は武運と福徳の神として、その一尊に迎えられました。
補足

毘沙門天の縁日は、一般に寅の日とされます。日本の暦では日にも十二支をあて、十二日ごとに寅の日がめぐってきます。信貴山の寅の示現の言い伝えにちなむとされ、京都では鞍馬の初寅参りも、古くから同じ寅の日の縁として親しまれてきました。

平等寺

平等寺の毘沙門天

四国八十八ヶ所第二十二番札所、高野山真言宗の平等寺では、毎月1日の夜に毘沙門天護摩を修しています。1日は朔日さくじつ、月のはじまりの日です。毘沙門天の別行の儀軌にも、月の一日と十五日を行を起こす日と説き、行を受け保つ者を、眼のひとみを護るように、身命を護るように常に擁護する、という毘沙門天の誓いが見えます。この起首の日は、日本の事相書『五十卷鈔』にも書き継がれました。月のはじめに修する平等寺の護摩は、この伝統に重なります。

平等寺の毘沙門天は、江戸期の作と伝わる寄木造よせぎづくり(複数の木を組んで造る技法)の立像です。甲冑を身につけ、右手に鉾、左手に宝塔を捧げ持つお姿です。

人に安楽を、暮らしに財を、国土に護りを。そして、授かった福を自分だけに留めず、人へ回すこと。平等寺では、福徳と勝運を願う祈りを護摩の智火にのせ、この誓いとともにお届けします。護摩の内容とお申し込みの手順は、下の解説ページでご案内しています。

毘沙門天のお顔
甲冑をまとうきびしいお顔

お像の諸元

造像江戸期(推定)
構造寄木造
像容立像。右手に鉾、左手に宝塔
平等寺の毘沙門天(紹介)毎月1日の毘沙門天護摩(解説・お申し込み)

よくあるご質問

願いごとから護摩を選ぶ

平等寺では、五尊の月例護摩をオンラインで受け付けています。願いごとに近い仏さまを選び、申込画面で内容を確かめられます。

五つの護摩を願いごとから選ぶ
参考文献

参考文献・出典

本記事は、次の原典と資料にもとづいて、高野山真言宗 平等寺 住職 谷口真梁(たにぐち しんりょう)が記しました。漢訳経典・儀軌と事相書は大正新脩大藏經(CBETA・SAT)と『真言宗全書』の本文から、訳者・成立・章名を確認しています。「No.」は大正新脩大藏經の経・論番号です。研究論文は、無料で全文を読めるもの・書誌の確かめられるものにリンクを添え、寺院・博物館には公式サイトへのリンクを添えました。

漢訳:毘沙門天の経・儀軌と金光明経

不空ふくう訳『毘沙門天王経びしゃもんてんのうきょう』(大正蔵 No.1244)。本記事が引いた本誓の一節はこの経による。
不空訳と伝える『毘沙門儀軌びしゃもんぎき』(大正蔵 No.1249。三部の構成に統一がなく、不空の名に仮託して編まれたとみる研究が有力。縁起の部に安西城の霊験譚を収める)
不空訳と伝える『北方毘沙門天王随軍護法儀軌ほっぽうびしゃもんてんのうずいぐんごほうぎき』(大正蔵 No.1247。同系の儀軌群のひとつ)
般若斫羯囉はんにゃしゃから訳『摩訶吠室囉末那野提婆喝囉闍陀羅尼儀軌まかべいしらまんなやだいばからじゃだらにぎき』(大正蔵 No.1246)。画像品に、地天と尼藍婆・毘藍婆の二鬼を足下に置く兜跋形の像容を説く。
『北方毘沙門多聞宝蔵天王神妙陀羅尼別行儀軌ほっぽうびしゃもんたもんほうぞうてんのうじんみょうだらにべつぎょうぎき』(大正蔵 No.1250)。月の一日・十五日を修法の起首(はじめの日)と定める。
義浄ぎじょう訳『金光明最勝王経こんこうみょうさいしょうおうきょう』巻第六「四天王護国品」(大正蔵 No.665。長安三年〔703年〕、西明寺にて訳出)。本記事が引いた護国の誓い・吉祥天と多聞天を配する画像法・如意宝珠の法は、いずれも同品による。
曇無讖どんむせん訳『金光明経こんこうみょうきょう』「四天王品」(大正蔵 No.663。義浄訳とは品の構成・巻が異なる古訳)

真言宗・密教の事相書

勝賢しょうけん説『祕鈔ひしょう』巻第十六「毘沙門」(大正蔵 No.2489)。小野流の事相書。地天が脚を承ける毘沙門天の道場観、吉祥天女の一具の観想、宝塔を三昧耶形とする口伝を収める。
静然じょうねん撰『行林抄ぎょうりんしょう』第六十五「毘沙門法」(大正蔵 No.2409、第76巻)。平安末の東密の事相書。毘沙門天への帰依の前提に、法を興し人を利する願を置く口決を伝える。
教舜きょうしゅん『祕鈔口决ひしょうくけつ』第二十四「毘沙門法」「吉祥天法」(真言宗全書 第28巻、398〜406頁)。『祕鈔』への口決注釈。毘沙門天法の道場観、地天が脚を承けるのは兜跋の姿に限るという念押し、塔を理・棒を智とし身そのものを塔と見る口伝、兜跋の名義説話、吉祥天を宝生尊の分身とする伝を収める。
興然こうねん『五十卷鈔ごじっかんしょう』第三十九「毘沙門」(真言宗全書 第30巻、304〜315頁)。支度・種子・三形・形像・印契・真言・梵号・護摩・遍数の九門で毘沙門天法を集成する。三昧耶形に宝塔と宝棒の二種を挙げ、月の一日・十五日の起首を伝え、護摩の部主段に吉祥天、念誦に善膩師童子を数える。
動潮どうちょう等『三寶院流洞泉相承口訣さんぼういんりゅうとうせんそうじょうくけつ』(真言宗全書 第33巻、285頁)。宝塔を三昧耶形とする口訣と、地天が脚を承け二部の薬叉が足を扶ける兜跋の姿を記す。
性寂しょうじゃく口・勝慧しょうえ記『祕密儀軌隨聞記ひみつぎきずいもんき』第五(真言宗全書 第1巻、101〜103頁)。『毘沙門天王経』『摩訶吠室囉末那野儀軌』への随聞記。足下の二夜叉を貪・瞋・癡の三毒に配し、吉祥天女の印に宝珠を観ずる師伝を伝える。
『真言宗全書』全42巻、真言宗全書刊行会。日本真言宗の教相・事相を集成した基本叢書。

研究論文・研究書

小師順子「毘沙門天霊験譚の成立について―不空と毘沙門天の関係を中心に―」『印度學佛教學研究』第53巻第1号、2004年、208〜210頁。 J-Stageで読む
石井正稔「不空訳『毘沙門儀軌』について」『印度學佛教學研究』第68巻第1号、2019年、190〜193頁。『毘沙門儀軌』の成立と伝来を検討する。 J-Stageで読む
鈴木隆泰(すずき たかやす)「The Primary Introduction of the Rites for Good Fortune into the Suvarṇaprabhāsa Described in the Śrī-parivarta」『印度學佛教學研究』第54巻第3号、2006年。『金光明経』吉祥天女品の福徳儀礼の研究。
田寺英治「兜跋毘沙門天小考(上)」『史迹と美術』第78巻第2号、2008年、46〜55頁。 CiNii書誌
田寺英治「兜跋毘沙門天小考(下)」『史迹と美術』第78巻第3号、2008年、84〜91頁。 CiNii書誌
佐藤有希子(さとう ゆきこ)『毘沙門天像の成立と展開』中央公論美術出版、2022年。Amazonで見る ↗

概説書・入門書

信貴山大本山千手院『毘沙門信仰のすすめ』国書刊行会、2022年。毘沙門天王とは何か、礼拝の仕方、信貴山の由来をまとめた信仰の入門書。Amazonで見る ↗
田辺勝美『毘沙門天像の誕生』(歴史文化ライブラリー81)吉川弘文館、1999年。毘沙門天像の源流をガンダーラ・西方世界にたどる概説。Amazonで見る ↗
佐和隆研(さわ りゅうけん)編『仏像図典』吉川弘文館、増補版 1990年(初版 1962年)。Amazonで見る ↗
錦織亮介『天部の仏像事典』(東京美術選書35)東京美術、1983年。毘沙門天を含む天部諸尊の図像を引ける事典。Amazonで探す ↗
奈良国立博物館編『特別展 毘沙門天―北方鎮護のカミ―』(展覧会図録)奈良国立博物館、2020年。インドから日本までの毘沙門天像を通観する図録。Amazonで探す ↗

寺院・博物館・データベース

信貴山 朝護孫子寺(奈良)。 公式サイト
鞍馬寺(京都)。 公式サイト
東寺(京都。国宝 兜跋毘沙門天立像)。 公式サイト
東大寺 戒壇院戒壇堂(奈良。四天王像)。 公式サイト
奈良国立博物館。 公式サイト
東京国立博物館。 公式サイト
e国宝(国立文化財機構所蔵の国宝・重要文化財)。 公式サイト
文化遺産オンライン(文化庁)。 公式サイト

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