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読みもの

入仏三摩耶とは

仏に願う人から、仏の願いを生きる人へ

入仏三摩耶にゅうぶつさんまやとは、「仏の誓いの内側へ入る」ことを表す真言しんごん(仏の言葉)です。仏が一切を救おうとする誓いを受け取り、その願いを自分の歩みにする。その始まりを告げる言葉にあたります。この真言は、師が弟子を仏の道へ迎える灌頂かんじょう(密教で師から弟子へ法を授ける儀式)の場で、阿闍梨あじゃり(法を授ける師)が両手に印いんを結び、弟子の頂に当てながら唱えます。入るのは仏像の中でも、別の世界でもありません。平等寺では、檀信徒の皆さまにもこの真言をお唱えいただくことを勧めています。唱え方は、記事だけで判断せず平等寺住職にお尋ねください。

 

  1. 仏の誓いへ入る、一つの真言
  2. 「入る」とは、どこへ入るのか
  3. 三摩耶とは、どんな誓いか
  4. 灌頂では、何が行われるのか
  5. 三摩耶戒は、何を守る戒か
  6. 胎蔵と金剛界、二つの三摩耶の真言
  7. 唱え方は、住職にお尋ねください
  8. よくある質問
  9. 出典と参考資料
灌頂の場面

仏の誓いへ入る、一つの真言

入仏三摩耶は、『大日経』の灌頂に現れる具体的な真言です。抽象的な教義の名ではありません。

『大日経』では、大日如来だいにちにょらい(密教の根本の仏)が深い禅定ぜんじょうから起ち、この「入仏三昧耶持明」を説きます。持明じみょうは真言のことです。声に出す短い言葉ですが、その一句には四つの意味が重ねられています。仏と衆生は隔てられていないという平等。仏が決して捨てない本誓。迷いを除く働き。眠りから呼び覚ます働き。この四つは、あとの節でひとつずつ見ます。

『大日経疏』は、音写された一字一字まで「法界へ入る門」として読みます。意味を説明文へ置き換えれば済むのではありません。灌頂では、真言を唱える声、両手に結ぶ印、弟子を仏の身と観じる心を、一つの行として重ねます。そこに密教の真言のあり方があります。

平等寺では、檀信徒の皆さまにも入仏三摩耶の真言を唱えることを勧めています。ただし、印や観法を伴う修法と、寺院から勧められた真言の唱誦は同じではありません。唱誦は檀信徒の皆さまへ開かれており、修法は灌頂や伝授の中で阿闍梨から受けます。

入仏三昧耶持明の語と、三摩耶の義

阿三迷asame無等

たぐいなき平等。仏と衆生が、根本においてひとしいこと。

呾哩三迷trisame三平等

三世・三業などの隔てが、ことごとく等しくなること。除障の義。

三麼曳samaye三摩耶

仏の本誓そのもの。その誓いに入り、忘れず保つこと。

莎訶svāhā成就

この誓いが、わが身に成り立ちますように、という結びの願い。

「のうまく さんまんだ ぼだなん あさんめい ちりさんめい さんまえい そわか」。あまねき諸仏に帰命し、無等にして三たび平等なる三摩耶に入る、という真言です。『大日経疏』は、この一語一語に三摩耶の四義(平等・本誓・除障・警覚)が込められていると説きます。

仏が法界胎蔵三昧に住して説く

日本語訳
そのとき仏は、法界胎蔵三昧に住して、入仏三昧耶持明を説いた。
原文
即於是時住法界胎藏三昧、說入佛三昧耶持明。
解説
ここにいう持明が、入仏三昧耶持明です。平等寺では檀信徒の皆さまにも唱誦を勧めていますが、この記事は唱え方の指導や作法の伝授に代わるものではありません。
出典
善無畏・一行訳『大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)』巻二「入漫荼羅具縁真言品」(大正蔵 T18n0848)
補助典拠を見る:持明とは、陀羅尼(真言)である
日本語訳
持明とは、梵語で陀羅尼という。明とは、一切の明門・明行を総持し、この三摩耶の誓願を尽くすまで終に漏らし失わないこと。ゆえに入仏三昧耶持明と名づける。
原文
持明者、梵云陀羅尼。明謂總持一切明門明行、乃至盡此三昧耶誓願以來終不漏失、故名入佛三昧耶持明也。
出典
善無畏述・一行記『大毘盧遮那成仏経疏(大日経疏)』巻九(大正蔵 T39n1796)
補助典拠を見る:一字一字が、法界へ入る門
日本語訳
一字一字が、それぞれ法界へ入る門である。たとえば「阿三迷あさんめい」でいえば、阿の字は無生(本不生)の門、娑の字は無諦の門、麼の字は大空の門である。
原文
一一字皆是一種入法界門。如言阿三迷者、阿字是無生門、娑字是無諦門、麼字是大空門也。
出典
善無畏述・一行記『大日経疏』巻七(大正蔵 T39n1796)
補足

「入仏三摩耶」と「入仏三昧耶」は表記が違うだけで、どちらも samaya の音写です。本記事では、見出しに「三摩耶」を用います。

入る

「入る」とは、どこへ入るのか

「入仏」とは、仏との関係の向きが定まることです。どこかへ移動する話ではありません。

『大日経』は、この真言を聞いた仏子は「一切の法において違え越えない」と説きます。これは、その後の行為が自動的に正しくなり、二度と迷わないという保証ではありません。灌頂によって、仏の誓いを自分の立つ場所とする。その宗教上の方向を述べた言葉です。人はなお迷い、誓いに背くこともあるからこそ、戒と懺悔が説かれます。

『大日経疏』は、この転換を「仏の平等戒に入り、聖胎に託される」と表します。聖胎せいたいとは、仏のいのちの中に抱かれ、育てられるという譬えです。母の胎に宿った子が、自分の力で育つのではなく、抱かれながら育つように、という言い方です。自分の力だけで仏へ近づくのではない。先に差し出されている仏の誓いに身を託す。それが、ここでいう「入る」です。

聞く者は、一切の法に違え越えない

日本語訳
一切の仏国土、一切の菩薩の集まりのなかでこの入三摩耶の真言を説き終えると、諸の仏子でこれをともに聞いた者は、一切の法において違え越えることがなくなる。
原文
於一切佛剎一切菩薩衆會之中說此入三昧耶明已、諸佛子等同聞是者、於一切法而不違越。
解説
『大日経疏』巻九は、同じ句を「一切の真言法において、あえて違え越えない」と釈し、続けて越三昧耶の四つの相(不平等の見、限量の心、名利への随順、放逸懈怠)を挙げます。違犯が起こりえないという保証ではなく、誓いを立てた者の姿勢を述べた句として読みます。
出典
『大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)』巻二(大正蔵 T18n0848)

仏の平等戒に入り、聖胎に託される

日本語訳
入仏三昧耶持明を説く。この持明によって仏の平等戒に入る。これが聖胎に託されるという義である。
原文
說入佛三昧耶持明。以此持明得入佛平等戒、即是託聖胎義也。
出典
善無畏述・一行記『大日経疏』巻九(大正蔵 T39n1796)
三摩耶の四つの義

三摩耶とは、どんな誓いか

三摩耶とは、単なる約束ではありません。『大日経疏』は、仏の誓いがどう働くかを四つの言葉で示します。

三摩耶の四義を説く

日本語訳
三摩耶とは、平等の義であり、本誓の義であり、除障の義であり、警覚(驚覚)の義である。
原文
三昧耶是平等義、是本誓義、是除障義、是驚覺義。
出典
善無畏述・一行記『大日経疏』巻九(大正蔵 T39n1796)
補助典拠を見る:一切如来の金剛の誓い
日本語訳
結んで三摩耶というのは、諸法の平等を説き、一切を我のごとくならしめんと大誓願を立て、あまねく衆生に浄らかな知見を開かせ、これによって衆生と諸仏を警覚するからである。ゆえにこの三摩耶を、一切如来の金剛の誓いと名づける。
原文
結云三昧耶者、即是必定師子吼說諸法平等義故、立大誓願當令一切得如我故、欲普爲衆生開淨知見故、以此警覺衆生及諸佛故、是故此三昧耶名爲一切如來金剛誓誠。
出典
『大日経疏』巻九(大正蔵 T39n1796)

平等

仏は、身・言葉・心のどこにも、仏と衆生を切り離す決定的な隔たりを見ません。「無等」は、そもそも優劣を立てられない平等へ開かれる語として釈されます。何か一つと比べて同じ、という意味ではありません。

本誓

仏は、生きとし生けるものを悟りへ導く働きを休めないと誓います。入仏三摩耶は、この本誓を受け取る入口です。

除障

迷いは、仏の心を見えなくする覆いです。仏の心が無くなった証拠ではありません。その覆いを除こうとする働きをいいます。

警覚

迷いの眠りにある私たちへ、仏の言葉が呼びかけます。仏の誓いを受けるとは、その呼びかけに応じて起き上がることでもあります。

灌頂

灌頂では、何が行われるのか

入仏三摩耶は、灌頂かんじょうの中で、阿闍梨が印を結び、弟子の頂に印して真言を唱える場面に現れます。

『大日経疏』が描くのは、阿闍梨が弟子の身を大日如来の体と観じ、まず入仏三昧耶印を頂に印す場面です。続いて別の印を心と臍のあたりに印します。弟子を、まだ仏から遠い存在として扱うのではありません。仏の身に等しいものとして灌頂へ迎えます。

印を結ぶ身体、真言を唱える声、弟子を仏の身と観ずる心。この三つはばらばらではありません。だから入仏三摩耶は、師から弟子へ授けられる出来事です。説明を読んだだけで完結する知識ではありません。

入仏三昧耶印を頂に印す

日本語訳
そのとき阿闍梨は、弟子の身を五輪と観じ、五字をもって保ち、心の花の台に阿字などを置いて、ただちに大日如来の体に等しからしめる。入仏三昧耶印をその頂に印し、次に法界生印を心に印し、また転法輪印を臍輪の上に印して、それぞれ真言を三遍唱える。
原文
時阿闍梨觀弟子身作五輪、以五字持之、兼於心花臺中置阿字等、使即同大日之體。以入佛三昧耶印印其頂上、次以法界生印印心、又作轉法輪印印齊輪上、各三誦彼真言。
出典
善無畏述・一行記『大日経疏』巻八(大正蔵 T39n1796)
補足

ここに引くのは、灌頂で何が行われるかを述べた注釈の記述であって、手順書ではありません。『大日経疏』は同じ段で、壇へ入っていない者に聞かせないよう戒めています。印相の結び方や観法は、灌頂と伝授の中で阿闍梨から受けます。

戒

三摩耶戒は、何を守る戒か

入仏三摩耶の先にある三摩耶戒さんまやかいは、仏の誓いに応えて生きるための戒です。

『大日経』が挙げる根本は四つです。正法を捨てない。菩提心を捨てない。相手にかなう教えを惜しまない。生きとし生けるものを利益する歩みを捨てない。何を禁じられたかだけでなく、何を決して手放さないかが問われます。

空海は『御請来目録』に、恵果阿闍梨からまず発菩提心戒を授かり、その後で灌頂道場へ入ることを許されたと記しました。密法より先に、仏と同じ方向へ歩む心を受ける。この発菩提心戒を三摩耶戒と重ねて説くのは、空海以後に整えられた理解です。三摩耶戒が灌頂の土台とされる理由が、ここに見えます。

入仏三摩耶は、その誓いへ入る側の言葉です。後に人がその誓いへ背くことはあり得ます。それが越三摩耶おつさんまや、結んだ誓いを踏み越えることです。けれど、入口で結ばれた関係が無意味になるのではありません。背いたと気づいた人のために、懺悔と立ち直りの道も説かれます。

恵果は、まず発菩提心戒を授けた

日本語訳
私(空海)に発菩提心戒を授け、灌頂の道場に入ることを許された。受明灌頂に入壇することは再三、阿闍梨の位を受けることは一度であった。
原文
授我以發菩提心戒、許我以入灌頂道場、沐受明灌頂再三焉、受阿闍梨位一度也。
出典
空海『御請来目録』(大正蔵 T55n2161)

四重禁の根本の偈

日本語訳
仏子よ、汝は今より、身命を惜しまぬがゆえに、正法を捨てず、菩提心を捨て離れず、一切の法を出し惜しみせず、衆生を利さぬ行いをしてはならない。仏は三摩耶を説く。汝、善く戒に住する者よ、自らの命を護るように、戒を護りなさい。
原文
佛子汝從今、不惜身命故、常不應捨法、捨離菩提心、慳悋一切法、不利衆生行。佛說三昧耶、汝善住戒者、如護自身命、護戒亦如是。
出典
『大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)』巻二「入漫荼羅具縁真言品」(大正蔵 T18n0848)
補足

三摩耶戒の整理の仕方は宗派・次第によって表現が異なりますが、核心は、仏の本誓と自分の菩提心を切り離さないことにあります。

二つの真言

胎蔵と金剛界、二つの三摩耶の真言

平等寺では、三摩耶戒真言「オン サンマヤ サトバン」と入仏三摩耶の真言の両方を、檀信徒の皆さまにお唱えいただくことを勧めています。この二つは別の真言で、それぞれ金剛界と胎蔵の灌頂に位置づけられます。

入仏三昧耶持明は、胎蔵の根本経典である『大日経』に現れます。一方、「オン サンマヤ サトバン」は金剛頂経系の灌頂に現れ、「汝は三摩耶なり」と弟子へ告げる真言です。文も出どころも異なりますが、それぞれ胎蔵と金剛界の灌頂に位置づけられます。

平等寺では、この両者を両部に対応する一対の真言として、三摩耶戒真言と同じく入仏三摩耶の真言も檀信徒の皆さまにお唱えいただくことを勧めています。唱えるときは、二つの真言を混同せず、住職から唱え方を聞いてください。なお「オン サンマヤ サトバン」は、灌頂で師が弟子へ告げるだけの真言ではありません。常用の次第では、行者自身が普賢三摩耶ふげんさんまやの印明として唱えます。

弟子に、三摩耶を授ける灌頂の真言

日本語訳
弟子に薩埵金剛印を結ばせ、この心の真言「三摩耶薩怛鑁(オン サンマヤ サトバン)」をもってする。
原文
令弟子結薩埵金剛印、以此心、三摩耶薩怛鑁。
解説
梵語では oṃ samayas tvaṃ。金剛頂経系の灌頂で、弟子に三摩耶を授ける場面に現れます。同じ真言は『金剛頂蓮華部心念誦儀軌』(T18n0873)や『無畏三蔵禅要』(T18n0917)など多くの儀軌に伝わります。サンスクリットの音に近づければ「おん さまやさとばん」です。
出典
不空訳『金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経』(大正蔵 No.865)
平等寺での唱誦

唱え方は、住職にお尋ねください

平等寺では、檀信徒の皆さまにも、三摩耶戒真言とともに入仏三摩耶の真言を唱えることを勧めています。

真言の音は、文字だけでは伝えきれません。平等寺で唱える方は、読み方、息の継ぎ方、唱える回数などを住職にお尋ねください。印や観法を伴う修法は、灌頂や伝授の中で阿闍梨から受けるものです。平等寺以外の寺院に所属する方は、その寺院の指導に従ってください。

よくある質問

参考文献

出典と参考資料

本記事は、高野山真言宗 平等寺 住職 谷口真梁(たにぐち しんりょう)が、真言密教の典籍と研究にもとづいて記しました。漢訳原文は大正新脩大蔵経(大正蔵)の本文から引用し、出典は冊・経番号(Tnnnn)・頁段を示します。

根本経典(CBETA)

善無畏・一行訳『大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)』(大正蔵 第18冊 T18n0848)。巻2「入漫荼羅具縁真言品」(入仏三昧耶持明 p.12c、四重禁の偈 p.12b)/巻4「密印品」(短形の真言 p.24b)/巻7「供養次第法」真言行学処品(増広形の真言 p.47a)

注釈書(CBETA)

善無畏述・一行記『大毘盧遮那成仏経疏(大日経疏)』(大正蔵 第39冊 T39n1796)。巻8(灌頂での入仏三昧耶印、p.661b)/巻7(真言の字釈=一字が入法界門 p.649c、真言法教=阿字門 p.651b)/巻9(入仏三昧耶持明の語釈・三摩耶の四義 p.674c、得入仏平等戒・託聖胎 p.675a)
不可思議撰『大毘盧遮那経供養次第法疏』(大正蔵 第39冊 T39n1797、p.794c)。入仏三昧耶明門
覚苑撰『大日経疏演密鈔』(卍続蔵 第23冊 X23n0439)。入仏三昧耶印の注釈

儀軌(CBETA)

不空訳『大日経入蓮華胎蔵海会悲生曼荼羅広大念誦儀軌供養方便会』(大正蔵 第18冊 T18n0851、p.97a)。入仏三昧耶の増広形真言
胎蔵系の建立軌・名号(大正蔵 第18冊 T18n0855・T18n0859・T18n0860)。入仏三昧耶印・契・明
歓喜天系儀軌(大正蔵 第21冊 T21n1205、p.34c)。「入仏三摩耶印」表記の実例

三摩耶戒の典籍(空海が統合した諸源・CBETA/SAT)

空海『御請来目録』(大正蔵 第55冊 T55n2161)。恵果から発菩提心戒を授かり、その後に灌頂を受けた次第
遍照金剛(空海)撰と伝える『三昧耶戒序』(大正蔵 第78冊 T78n2462、p.5a–6b)。戒体=衆生本来平等の浄菩提心
不空訳『受菩提心戒儀』(大正蔵 第18冊 T18n0915、p.941a)。五大願と発菩提心真言(oṃ bodhicittam utpādayāmi)
善無畏説と伝える『無畏三蔵禅要(無畏三蔵受戒懺悔文及禅門要法)』(大正蔵 第18冊 T18n0917、p.944a。慧警筆記。後代の再補を含む)。三聚浄戒・十重戒と真法戒(清浄法戒)
三摩耶戒真言「オン サンマヤ サトバン(oṃ samayas tvaṃ/唵三摩耶薩怛鑁)」は金剛頂経(金剛界)系の灌頂真言。不空訳『金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経』(大正蔵 第18冊 T18n0865、p.218a)、金剛智訳『金剛頂瑜伽中略出念誦経』(同 T18n0866、p.249c)の灌頂段をはじめ、『金剛頂蓮華部心念誦儀軌』(T18n0873)・『無畏三蔵禅要』(T18n0917)など多くの儀軌に分布。梵語の基は Sarvatathāgatatattvasaṃgraha(STTS)
「三摩耶戒」という語と体系は、空海が『無畏三蔵禅要』『受菩提心戒儀』『大日経』『大日経疏』の戒説を統合して立てたとされる。発菩提心戒・仏戒・無為戒の別称(空海『弘仁遺誡』ほか)

真言宗資料(真言宗全書)

靜遍『祕宗文義要』(真言宗全書 第22巻 75頁)・杲寶『胎藏界念誦次第要集記』(同 第25巻 70頁)。法界胎蔵三昧から入仏三昧耶持明が説かれ、仏平等戒へ入り聖胎に託されることを解説
觀賢『三昧耶戒作法般若寺』(真言宗全書 第27巻 21頁)。「金剛界三昧耶戒教」と明記
心覺『傳法灌頂文義肝要抄』(真言宗全書 第27巻 116–117頁)。金剛界灌頂の作法中に三昧耶戒真言を配置

真言の語釈

入仏三昧耶持明:namaḥ samanta-buddhānāṃ asame trisame samaye svāhā(具縁品形)
阿三迷=asame(無等)/呾哩三迷=trisame(三平等・除障)/三麼曳=samaye(三摩耶・本誓)。一字釈は阿=無生(本不生)門・娑=無諦門・麼=大空門(大日経疏 巻7)
増広形(密印品):namaḥ sarva-tathāgatebhyaḥ viśva-mukhebhyaḥ oṃ asame trisame samaye svāhā

梵語・チベット

真言の連続梵文は大日経梵本の散逸により現存せず(GRETIL等に不在)。漢訳音写と『大日経疏』の語釈から還元。samayas tvam は Sarvatathāgatatattvasaṃgraha(GRETIL)に実在
チベット訳の対応:sangs rgyas kyi dam tshig la 'jug pa(諸仏の三摩耶〔dam tshig〕に入る)。大日経系(カンギュル Toh 494)

辞典・研究論文

田中千秋「三昧耶戒序の理解」(『密教文化』第120号、1977年、pp.1–9)。三摩耶戒序の読解
山尾宥勝「三昧耶戒の戒体説についての一試論 ―真言行者の資格とは何か」(『智山学報』第71輯、2022年、pp.195–213)。戒体=菩提心。入仏三昧耶真言と普賢三昧耶真言を、胎蔵・金剛界それぞれの起因とする
『精選版 日本国語大辞典』(小学館)「三昧耶戒」。なお「入仏三昧耶」は同辞典に立項がなく、語釈は『大日経疏』の説明によります

調査基盤

原典検索・本文照合は buddha CLI(CBETA・SAT・Tipitaka・GRETIL・SARIT・MUKTABODHA・浄土宗全書・Adarsha/BUDA の8コーパス)により、全引用を逐語照合した

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