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読みもの

不動明王とは

怒りの相に、大悲を宿す

燃えさかる火焔を背に、剣となわを執り、磐石のうえに揺るがず坐すお不動さま。なぜ、仏さまがこれほど険しい顔をしているのでしょう。密教では、不動明王を、大日如来の教えを実行するために忿怒ふんぬの姿であらわれた尊と説きます。そのきびしい表情は、迷いを断ち、何としても救おうとする大悲の強さです。本誓ほんぜい(みずから立てた根本の誓い)とお姿を、経典と儀軌の言葉からたどります。
不動明王(お不動さま)のお姿

 

  1. 不動明王とは
  2. 大日如来の化身
  3. お姿と、その意味
  4. 護摩の智火と『大日経』
  5. ご利益と、揺るがぬ心
  6. 五大明王という配置
  7. おとなえする真言
  8. 日本での信仰
  9. 平等寺の不動明王
  10. よくあるご質問
  11. 参考文献・出典
概要

不動明王とは

きびしい表情の奥にあるのは、わが子を見るような慈しみ。お不動さまは、救うために怒りの相をとる仏さまです。

不動明王(お不動さま)は、厄除け・災難除けの祈りの本尊として、日本でもっとも親しまれてきた明王です。平等寺でも、毎月28日の夜、お不動さまの御前で不動の護摩ごま(炉に智火を燈して祈る密教の修法)を修しています。

明王みょうおうとは、穏やかな説法だけでは教えに従いにくい者を、あえてきびしい姿で導く尊の総称です。その中心にいるのが不動明王。密教では、大日如来の教えを実行する教令輪身きょうりょうりんじんとして、不動明王を位置づけます。別々の尊名と姿をもちながら、大日如来の救いのはたらきを忿怒の相で示す尊です。

お不動さまは常に火焔のなかに住し、その火で煩悩ぼんのう(人を苦しめる心の迷い)と一切の障りを焼き尽くします。右手の利剣で迷いを断ち、左手の羂索けんじゃく(なわ)で迷う者を引き寄せて、さとりへと導く。磐石のうえに揺るがず坐す姿は、何ものにも動じない定じょう(深く静まった心の集中)をあらわします。

梵語ではアチャラナータ(Acalanātha)。「動かざる尊」という意味で、「聖無動尊しょうむどうそん」とも呼ばれます。

誓願

大日如来の化身

大日如来の命めいを受け、忿怒の姿で教えを行きわたらせる身を、教令輪身きょうりょうりんじんといいます。お不動さまは、その代表です。

お不動さまを大日如来の化身と説く経軌きょうき(経典と、修法の細目を定めた儀軌)のひとつが、『勝軍不動明王四十八使者秘密成就儀軌』です。この文献は不空・遍智の撰と伝えられ、ひとたび真言でご縁を結んだ人を、生まれ変わるたびに護る、と説きます。

経軌の言葉(化身・書き下し)

日本語訳
不動とは、本仏である毘盧遮那仏(大日如来)の化身である。ひとたびその秘密の真言を保てば、生まれ変わるたびに世の人を加護してくださる。
原文
不動とは、本仏 毘盧遮那仏の化身なり。一たび秘密の呪を持たもちて後は、生生に世間の人を加護したまう。
解説
本仏である毘盧遮那仏びるしゃなぶつは、大日如来のこと。ひとたび結んだご縁を、生まれ変わりの果てまで持ちつづけてくださるという誓いです。
出典
『勝軍不動明王四十八使者秘密成就儀軌』(大正蔵 No.1205)
補足

同じ経軌は、お不動さまの四つの誓い(四弘願)を説きます。「我が身を見る者は菩提心を発し、我が名を聞く者は悪を断ち善を修し、我が説を聞く者は大智慧を得、我が心を知る者は即身に成仏する」。これは、この経軌が伝える本誓です。忿怒の姿の奥にあるのは、人を仏へ導こうとする大悲です。

お姿

お姿と、その意味

お不動さまのお姿は、経軌に細かく説かれています。一筋の弁髪べんぱつ(編んだ髪)を左に垂らし、片目を眇すがめに細め、右手に鋭い剣を執り、左手に羂索を持ち、磐石のうえに坐す。日本では、この目を右眼で天を、左眼で地を見ひらく「天地眼てんちがん」の形にあらわすお像が広まり、身の色は青黒く表すのが通例となりました。

剣

煩悩を断ち切る智慧の利剣。剣はお不動さまの本誓を象徴する形(三昧耶形。さんまやぎょう)とされ、修法の観想では、種子カーンの一字が猛利の智剣に変じ、その剣がお不動さまに変わると観じます。剣と羂索を一対に見て、剣を煩悩を断つ智、なわを断たれる煩悩とし、二つで理と智の不二をあらわすと読む抄物もあります。龍が剣にからみつく倶利伽羅剣くりからけんの姿も、日本で古くから伝えられてきました。

羂索けんじゃく

迷う者をしばり取り、引き寄せて救い上げるなわ。

磐石ばんじゃく

何ものにも揺るがない、不動の心をあらわす座。

火焔

煩悩を焼き尽くす智火。身から智火を放つ禅定を火生三昧かしょうざんまいといい、その炎は、龍を食らうと伝わる大鳥 迦楼羅かるらの形をした迦楼羅炎かるらえんに描かれます。

補足

弁髪・牙といった細かな約束ごとは、経軌をもとに日本で「不動十九観」という見方に整えられました。その全文は、10世紀の石山寺の学僧 淳祐しゅんにゅうが集めた『要尊道場観』にすでに見え、第一条は「此の尊は大日如来の化身」です。12世紀末の興然こうねんは、『五十卷鈔』にこれを「石山道場観に云く」と明記して全条引き、条ごとに『底哩経』や『大日経疏』のどこが典拠かを注記しました。そのうえで、典拠を勘かんがえ得ない条が残ると自ら断っています。事相書じそうしょ(修法の実際を記した書)によって字句に異同があり、口伝とともに写し伝えられてきました。従順な矜羯羅こんがらと荒々しい制吒迦せいたかの二童子を従える不動三尊も、広く造られました。

経典

護摩の智火と『大日経』

護摩は、炉に智火を燈し、護摩木と供物をささげて祈りを仏に届ける修法です。『大日経』は外護摩と内護摩を説き、また別の箇所では、仏の智慧が迷いを滅するはたらきを火にたとえます。ここで引くのは、金剛手こんごうしゅ菩薩が仏に向かって語る、その譬えです。

経典の言葉(智火・書き下し)

日本語訳
火が一切の薪を焼いて飽きることがないように、仏の一切智の智慧は、あらゆる無智(迷い)の薪を焼いて飽きることがない。
原文
譬えば火界の一切の薪を焼いて厭足えんそく無きが如く、是くの如く一切智智は、一切の無智の薪を焼いて厭足無し。
解説
火が薪を焼いて尽きないように、仏の智慧はどこまでも迷いを焼いてやまない、という譬えです。
出典
善無畏・一行訳『大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)』(大正蔵 No.848)
補足

この一節は護摩の起源を直接説明する文ではなく、仏の智慧を火にたとえた教えです。『大日経』が説く内外二種の護摩と、この智火の譬えとが密教の実践のなかで重なり、不動護摩では、お不動さまの智慧によって煩悩と障りを焼くと観じます。経軌は、この火を世間の火と出世間の火に分けます。人の善い心を焼いてしまう三毒の煩悩も、万物を育てる炎も世間の火。迷いを焼き尽くす智火が、出世間の火です。平安期の次第書はさらに、行者みずから火生三昧に入り、お不動さまと一体になって修すと伝えています(『要尊道場観』)。

利益

ご利益と、揺るがぬ心

お不動さまの智火は、災厄と障りを焼き、行者を昼夜に守り、その願いを成就へ導くと説かれます。

そのまなざしについて、経軌は讃さん(仏をほめたたえる偈文)のなかでこう歌います。

経軌の言葉(慈眼・書き下し)

日本語訳
かぎりなくすぐれたお姿(相好)の海であられながら、人を救う手だて(方便)としてこの身を現し、怒りの相へとお姿を変えられた。ゆえにわたしは、頭を垂れて礼拝いたします。その慈しみの眼で衆生をご覧になるさまは平等で、ひとり子を見るかのようです。
原文
無辺の相好海、方便もて此の身を現じ、嗔怒しんぬの相に変現したまう。故に我れ稽首けいしゅして礼したてまつる。慈眼をもって衆生を視ること、平等にして一子の如し。
解説
ほんらい限りなく美しい仏が、人を救うためにあえて怒りの姿を選んだ、と讃は歌います。忿怒の相の奥のまなざしは、わが子を案じる親の眼です。
出典
『勝軍不動明王四十八使者秘密成就儀軌』不動尊讃(大正蔵 No.1205)

厄除け・災難除け

智火が、外からの災いと内なる煩悩をともに焼き払うと説かれます。息災そくさい(災いを除くこと)と厄除けの祈りに、深く結びついてきた仏です。

行者の守護

魔と障りを退け、迷う者を引き寄せて、願いを成就させる。それがお不動さまの本願です。

揺るがぬ心

経軌(『底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法』)は「不動とは、真浄菩提の心(まっすぐにさとりへ向かう心)」とも説きます。外の出来事にも、内の煩悩にも揺り動かされない心。その名のとおりの据わった心が、お不動さまからいただく手本です。

毎月28日の不動護摩(解説)
真言宗

五大明王という配置

日本の真言密教で広く知られる配置が、五大明王です。お不動さまを中央(中尊)に、貪り・怒り・愚かさの三毒を降す降三世ごうざんぜ、もろもろの障りを除く軍荼利ぐんだり、怨敵や悪を打ち伏せる大威徳だいいとく、魔を打ち砕く金剛夜叉こんごうやしゃの四尊が、四方を固めます。明王の組み合わせや方位には流儀・典籍による異同がありますが、これは日本で代表的な一例です。平安の都では、この五尊を五つの壇にまつって息災や安穏を祈る五壇法ごだんほうも、権門の発願で盛んに修されました。

『大日経』は、曼荼羅の描き方を定めるくだりで、大日如来の下、西南の方角にお不動さまの座を置きます。息災の修法の本尊として、お不動さまは密教の修法体系の中心に据えられてきました。

真言

おとなえする真言

不動明王の真言(慈救呪)

のうまく さんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだ そわたや うん たらた かんまん

namaḥ samanta-vajrāṇāṃ caṇḍa-mahāroṣaṇa sphoṭaya hūṃ traṭ hāṃ māṃ

「あまねき金剛尊に帰命したてまつる。暴悪なる大忿怒尊よ、障りを打ち砕きたまえ」と祈る真言です。『勝軍不動明王四十八使者秘密成就儀軌』に「慈救」の名で説かれる中呪で、お不動さまの真言としてもっとも広くとなえられます。平安期からの次第書も、修法の中心にあたる正念誦(しょうねんじゅ)にこの呪を用いると定めており(『諸尊要抄』)、一字一字を身に布いてお不動さまと一つになる観法とともに伝えられてきました。

一字呪(小呪)

のうまく さんまんだ ばざらだん かん

namaḥ samanta-vajrāṇāṃ hāṃ

種子(しゅじ。仏を一字であらわす梵字)「カーン(hāṃ)」を中心とする、もっとも短い真言です。なお、より長い火界呪(大呪)は流派によって字句が異なるため、修法をつとめる僧侶の側では、所属の流派が伝える次第(しだい。修法の手順書)にしたがいます。10世紀の『要尊道場観』も、根本印とともにこの大呪を伝えています。

日本での信仰

日本での信仰

お不動さまは、現世利益の祈りの本尊として、日本でもっとも親しまれた明王です。

  • 三不動。絵画の名品として名高い三幅の不動画像です。黄不動(三井寺。国宝)は、承和5年(838)、25歳の智証大師円珍が修行中にまのあたりにした金色の尊を写させたと伝わり、「常に汝の身を擁護す」と告げたと伝えられます。経軌の定型によらない、感得の像です。青不動(青蓮院。国宝)、赤不動(高野山明王院)とあわせて三不動と呼ばれます。
  • 彫像と霊験の像。京都・同聚院のお不動さまは、藤原道長が建てた法性寺五大堂(1006年)の中尊と伝わる丈六の坐像で、仏師の康尚こうじょう(定朝の父)の作とされます。高野山の浪切不動は、弘法大師が唐から帰る船の荒波をこの尊が切り開いたと伝わる霊像で、元寇の際には博多湾の島へ運ばれ、敵国降伏の護摩が修されたと記録されています。
  • 霊場。近畿三十六不動尊霊場をはじめ、各地に不動の霊場・札所があります。
  • お不動さまの日。28日が不動の縁日とされる由来としては、三十日秘仏(日ごとに本尊を配する習わし)で28日が大日如来にあたり、その化身が不動であるから、という説がよく知られます(諸説あります)。
平等寺

平等寺の不動明王

四国八十八ヶ所第二十二番札所、高野山真言宗の平等寺は、不動信仰があつく、毎月28日の夜に不動護摩を修しています。28日はお不動さまの縁日です。

平等寺のお不動さまは、江戸期の作と伝わる寄木造の坐像です。右手に利剣、左手に羂索を執り、天地眼と牙をあらわした、忿怒のお姿です。

焼八千枚供しょうはっせんまいく(八千枚の護摩木をささげる大きな護摩)も、お不動さまを本尊とする大法として修しています。八千枚の護摩は、12世紀の事相書『諸尊要抄』が「八千枚乳木を焼く事」として次第を定め、興然の『五十卷鈔』も同じ次第を伝える、不動法の大行の系譜に連なるものです。中世の東寺で不動の別法として伝え習ったのは、この八千枚と虚空蔵求聞持こくうぞうぐもんじ(虚空蔵菩薩の真言を百万遍となえる行)の二つだけだったと、『祕鈔口决』は口伝を記します。

その本旨は息災にあります。月例の不動護摩は、その信仰の日常の要です。

厄除け・災難除け・息災延命。災いを断ち身を護る祈りを、護摩の智火にのせてお祈りしています。険しいお顔は、人を退けるためではありません。迷いを断ってでも救うという大悲を、平等寺では毎月の護摩に受け継いでいます。参列やお申し込みの流れは、下のリンク先で詳しくご案内しています。オンラインでもお参りいただけます。

不動明王のお顔(天地眼と牙)
天地眼と牙をあらわすお顔

お像の諸元

造像江戸期(推定)
構造寄木造
像容坐像。利剣と羂索を執る
平等寺の不動明王(紹介)毎月28日の不動護摩(解説・お申し込み)

よくあるご質問

願いごとから護摩を選ぶ

平等寺では、五尊の月例護摩をオンラインで受け付けています。願いごとに近い仏さまを選び、申込画面で内容を確かめられます。

五つの護摩を願いごとから選ぶ
参考文献

参考文献・出典

本記事は、次の原典と資料にもとづいて、高野山真言宗 平等寺 住職 谷口真梁(たにぐち しんりょう)が記しました。漢訳の経軌・論疏と真言宗の事相書は、大正新脩大藏經(CBETA。空海の撰述と事相書は SAT 大正蔵テキストデータベース)および『真言宗全書』の本文から確認しています。「No.」は大正新脩大藏經の経・論番号です。訳者・成立については、各テキストの題号と訳者表記(CBETA 底本)にもとづきます。研究論文には、J-Stage で全文公開されているものにリンクを付しました。

漢訳の一次資料(経と儀軌)

善無畏ぜんむい・一行いちぎょう訳『大毘盧遮那成仏神変加持経(大日経)』「入漫荼羅具縁真言品」(大正蔵 No.848)。不動明王を「不動如来使、慧刀と羂索を持つ」と説く一句(巻第一)が、お不動さまを大日如来の使者・教令輪身とする根本の典拠です。曼荼羅上の座(大日の下、西南)もこの偈に定められています。
不空ふくう訳『金剛手光明灌頂経最勝立印聖無動尊大威怒王念誦儀軌法品(立印軌)』(大正蔵 No.1199)
不空訳『底哩三昧耶不動尊威怒王使者念誦法』(大正蔵 No.1200)
不空訳『底哩三昧耶不動尊聖者念誦秘密法』(大正蔵 No.1201。全3巻。不動を「如来の法身」「真浄菩提の心」とし、四義の智火・火生三昧を詳説。本記事「揺るがぬ心」の項が引いた「不動とは真浄菩提の心」は、この儀軌による)
金剛智こんごうち訳『不動使者陀羅尼秘密法』(大正蔵 No.1202。不動使者を「毘盧遮那仏の化身」と説く)
不空・遍智へんち集『勝軍不動明王四十八使者秘密成就儀軌』(大正蔵 No.1205)。本記事が引いた化身の一節、四弘願(「我が身を見る者は菩提心を発す」にはじまる四つの誓い)、不動尊讃(慈眼の偈)、慈救呪・一字呪は、この儀軌による。

注釈と真言宗の事相書

一行いちぎょう記『大毘盧遮那成仏経疏(大日経疏)』(大正蔵 No.1796。伝統的には善無畏説・一行記とする)。お不動さまを、大日の花台で久しくすでに成仏した尊が、僮僕しもべの形を示して如来に給仕し、もろもろの務めをとる身と釈し、磐石の座を浄菩提心の妙高山王と説きます。
淳祐しゅんにゅう(石山内供)集『要尊道場観(石山道場観)』(大正蔵 No.2468)。10世紀・石山寺。不動の道場観・十九観・十九種布字観・十四根本契を収める、現存最初期級の真言宗事相書のひとつ。本記事の十九観と剣の観想は、これによります。
実運じつうん『諸尊要抄』(大正蔵 No.2484)。12世紀・小野流。不動法での慈救呪・火界呪の用い方、十九観、「八千枚乳木を焼く事」の次第を収めます。
興然こうねん『五十卷鈔ごじっかんしょう』第三十二 不動法(真言宗全書 第30巻、201〜205頁)。12世紀末の小野流の事相集成。十九観を「石山道場観に云く」と明記して全条引き、条ごとに『底哩経』『大日経疏』の典拠を注記します。「八千枚事」「焼八千枚表示事」も同巻に収めます。
教舜きょうしゅん『祕鈔口决ひしょうくけつ』第十五 不動法(真言宗全書 第28巻、332頁ほか)。東寺で伝え習う不動の別法を八千枚と虚空蔵求聞持の二つとし、八千枚をもっぱら息災に修する法と説きます。乳木の材と削り方、実際に修した回数まで口伝で記します。
龍曉りゅうぎょう『西院流能禪方傳授録さいいんりゅうのうぜんぼうでんじゅろく』(真言宗全書 第32巻、97頁ほか)。西院流の加行次第。正念誦に慈救呪、散念誦に火界呪と慈救呪を配し、種子カーンが智剣に変じ、智剣が不動明王に変ずる道場観を伝えます。
動潮どうちょうほか『三寶院流洞泉相承口訣さんぼういんりゅうとうせんそうじょうくけつ』(真言宗全書 第34巻、154〜155頁)。十九観の出自を石山道場観・淳祐の伝と記します。倶利伽羅については、所依とされる経を偽撰と見る説(『白宝口决抄』)を引き、その法の次第も分明でないと伝えます。
淳祐『四種護摩抄記ししゅごましょうき』(真言宗全書 第26巻、7〜82頁)。息災・増益・敬愛・調伏の四種の護摩とその作法を扱う、10世紀石山寺の事相書です。
真言宗全書 第36巻(385〜386頁)に収める抄物。不動の三昧耶形を剣と索の一対と見て理と智の不二をあらわすとし、磐石・両目・二童子・倶利伽羅の意味を項目ごとに解きます。
『真言宗全書』全42巻、真言宗全書刊行会。真言宗の教相・事相の書を集成した基本叢書です。

研究論文

松永有見「鎌倉時代の鎮護国家思想と不動明王」『密教研究』第74号、1940年、81〜91頁(誌面の題は「鎌倉時代の護國思想と不動明王」)。元寇のときの浪切不動の修法と志賀島の火焔塚を、史料からたどります。 J-Stageで読む
朝日道雄「京都同聚院藏 不動明王像と佛師康尚との關係」『密教研究』第66号、1938年、22〜32頁。同聚院不動を法性寺五大堂の中尊と見て、仏師康尚の作と推論した研究です。 J-Stageで読む
龜田孜「黄不動抄」『密教研究』第89号、1944年、21〜32頁。円珍が感得した黄不動画像の伝記史料と像容を検討した研究です。 J-Stageで読む
齋藤彦松「倶哩迦竜不動明王信仰の研究」『印度學佛教學研究』第27巻第1号、1978年、377〜380頁。倶利伽羅の名と形の源流を、インドの文献から経軌までたどります。 J-Stageで読む
田中悠文「智山所伝の『不動法』諸本について」『智山学報』第65輯、2016年、305〜320頁。不動法の次第書の伝承と、真言を身に布く布字観の諸本を調べた研究です。 J-Stageで読む

概説書・入門書

渡辺照宏『不動明王』朝日選書、朝日新聞社、1975年(のち 岩波現代文庫 学術285、2013年/吉川弘文館〈読みなおす日本史〉2022年、ISBN 978-4-642-07350-9)。不動信仰の由来と日本での受容を説く古典的概説。最初の一冊に向きます。Amazonで見る ↗
頼富本宏(よりとみ もとひろ)『観音・地蔵・不動:庶民のほとけ』角川ソフィア文庫、2024年(初版『庶民のほとけ 観音・地蔵・不動』NHKブックス、1984年)。三尊の庶民信仰を文庫で読める概説です。Amazonで見る ↗
下泉全暁(しもいずみ ぜんぎょう)『不動明王:智慧と力のほとけのすべて』春秋社、2013年、ISBN 978-4-393-11908-2。経軌から図像・修法までを、現代の僧侶の手でまとめた概説です。Amazonで見る ↗
羽田守快『読むだけで不動明王から力をもらえる本』大法輪閣、2016年、ISBN 978-4-8046-1386-4。信仰の実際に踏み込んだ、やさしい入門書です。Amazonで見る ↗
中野玄三『不動明王像』(日本の美術 第238号)至文堂、1986年。図版でお像の見方を学べる図像入門です。Amazonで探す ↗
宮坂宥勝 編『不動信仰事典』(神仏信仰事典シリーズ 9)戎光祥出版、2006年。不動信仰の歴史・霊場・図像を項目別に引ける事典です。Amazonで探す ↗
佐和隆研(さわ りゅうけん)監修、成田山新勝寺・種智院大学密教学会 編『総覧不動明王』法藏館、1984年。不動明王の遺品・図像を集成した基本資料集です。Amazonで探す ↗
頼富本宏『密教仏の研究:文献・美術遺品両面からの研究』法藏館、1990年。文献と美術遺品の両面から密教の諸尊を論じた研究書です。Amazonで探す ↗

寺院・霊場・データベース

園城寺(三井寺。滋賀)。日本三不動の一、黄不動(国宝)を伝えます。 公式サイト
青蓮院門跡(京都)。日本三不動の一、青不動(国宝)を伝えます。 公式サイト
高野山別格本山 明王院(和歌山)。日本三不動の一、赤不動を伝えます。 公式サイト
近畿三十六不動尊霊場会(1979年〔昭和54年〕発足)。 公式サイト
大本山成田山新勝寺(千葉)。不動信仰の代表的な寺院のひとつです。 公式サイト
e国宝(国立文化財機構)。国宝・重要文化財の不動明王像を高精細画像で見られます。 公式サイト
文化遺産オンライン(文化庁)。全国の指定文化財を横断検索できます。 公式サイト

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