1. ホーム
  2. 読みもの
  3. 六波羅蜜

六波羅蜜とは|六つの教えの意味と実践

六波羅蜜(ろっぱらみつ・ろくはらみつ)の意味と、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若の六つの実践を解説。経典の言葉と平等寺住職のコラムから、日常での実践やお彼岸との関係を学べます。

六波羅蜜の意味

六つの実践は、互いに支え合っています。

六波羅蜜(ろっぱらみつ)は、布施・持戒・忍辱・精進・禅定・般若の六つの実践です。大乗仏教では、自他の安らぎとさとりを願って歩む修行者(菩薩)が修めるべき道として説かれます。暮らしの中で慈悲と智慧を育てる指針です。

波羅蜜は、サンスクリットの pāramitā(パーラミター)を漢字に写した言葉です。「完成」を意味し、迷いの此岸(しがん・こちらの岸)からさとりの彼岸(ひがん・向こうの岸)へ渡ることから「到彼岸(とうひがん)」とも訳されます。分け与えることや言動を慎むといった日々の行いを、執着を離れる智慧とともに磨き上げていく道を指します。

六つの実践は、互いに支え合い、一つにつながっています。人に何かを差し出すとき、相手を思う布施の心には、相手を傷つけない言葉や態度(持戒)が欠かせません。たとえ礼を言われなくても腹を立てず(忍辱)、相手を思いやる行いを続け(精進)、穏やかな心で(禅定)、恩着せがましい思いにとらわれていないか見つめ直す(般若)。日常の一つの振る舞いの中に、六つの教えが息づいています。

布施波羅蜜(ふせはらみつ)

布施は、惜しむ心を離れて他者に分かち与える実践です。仏教では、金品や食べ物を施す「財施(ざいせ)」、正しい教えや知識を伝える「法施(ほうせ)」、そして恐れや不安を取り除いて安心を与える「無畏施(むいせ)」の三つを説きます。『六度集経』には、飢えた者には食を与え、寒さに凍える者には衣を与えるといった、相手の求めに応じた慈しみの施しが描かれます。

『金剛般若波羅蜜経』は、施す自分、受け取る相手、そして差し出した物の三つにとらわれない「不住相布施(ふじゅうそうふせ)」を教えます。何をどれだけ与えたか、見返りがあるかといった損得を離れ、ただ目の前の相手のために差し出す。見返りへの期待を手放し、相手を思って差し出すところに、布施波羅蜜の本来の姿があります。

持戒波羅蜜(じかいはらみつ)

持戒は、過ちを防ぎ、善い生き方を保つために、身(身体の動作)・口(言葉)・意(心)の三つを整える実践です。『大智度論』は戒を大地にたとえ、草木がすべて大地に根差して育つように、あらゆる善行は持戒という基盤があってこそ成り立つ、と説きます。

真言宗では、日常の指針として「十善戒(じゅうぜんかい)」を重んじます。命を大切にし、他人のものを奪わず、不実な言葉を慎み、怒りや過度な欲望に流されないといった十の戒めです。自らの振る舞いを省みて、穏やかな暮らしを保つための足場とします。

忍辱波羅蜜(にんにくはらみつ)

忍辱は、理不尽な侮辱や苦難に出会ったとき、怒りに心を奪われず、穏やかさを保つ実践です。『大智度論』は、他者からの非難や妨害に耐える「生忍(しょうにん)」と、病気や天災、世の無常という道理を静かに受け止める「法忍(ほうにん)」の二つを説きます。

忍辱は、危害や暴力を盲目的に我慢することとは異なります。危険な状況からは速やかに身を遠ざけ、必要な助けを求めることも実践の一部です。怒りや憎しみに心を明け渡さず、自らのところで負の連鎖を断ち切る心の強さこそが、忍辱波羅蜜の眼目です。

精進波羅蜜(しょうじんはらみつ)

精進は、善い行いに弛まず励み、それを保ち続ける実践です。サンスクリットの vīrya(ヴィーリヤ)は勇気を意味し、『大智度論』は精進を「一切の善法の根本」と位置づけます。布施や持戒も、投げ出さずに続ける意志があって初めて深まります。

精進は、善い行いそのものに喜びを見いだし、無理なく健やかに歩みを進めることです。怠けやあきらめの心に気づいたときは、何のために歩み始めたのかを思い出し、今日できる小さな一歩を丁寧に重ねていきます。

禅定波羅蜜(ぜんじょうはらみつ)

禅定は、散乱する心を静め、一つの対象に集中して物事を正しく見つめる実践です。『大智度論』は、激しい風の中にある灯火が周囲を照らせないように、心が散乱していては真の智慧は働かないと説きます。風を遮る静かな部屋(禅定)に置いてこそ、灯火はその明るさを全うできます。

また同論では、智慧を欠いた禅定を「まだ焼かれていない土器」にたとえます。心を静める定と、真実を見抜く慧の二つがそろって初めて、行いは確かな実を結びます。静けさの中に身を落ち着け、自分の心の波立ちや思い込みを見つめ直すことが、禅定の修習です。

般若波羅蜜(はんにゃはらみつ)

般若は、物事の実相(ありのままの姿)を見抜く根本の智慧です。あらゆる存在は無数の関わり合い(縁起)によって現れており、固定した不変の実体はないという「空(くう)」の道理を見通します。『般若心経』の「色即是空(しきそくぜくう)」は、この智慧を端的に表した言葉です。

『大智度論』は般若波羅蜜を「諸仏の母」と称えます。般若の眼(まなこ)があってこそ、布施や持戒などの行いが「施してやった」「戒を守った」という新たな慢心にならず、純粋なさとりへの歩みとなります。五つの実践を内側から照らし、完成へと導く要が般若です。

六つの実践と般若の関係

行いの中で、智慧を養います。

人に親切にした後で相手の反応に不満を覚えたり、規律を守っていることで守れていない人を見下してしまったりすることは、誰の心にも起こり得ます。善い行いを重ねるほど、その行い自体への誇りや執着が静かに芽生えやすくなります。そうした心の執着に気づかせてくれるのが、般若の智慧です。

『摩訶般若波羅蜜経』は、六つの波羅蜜が一つの節の中で互いに結びついて完成することを説きます。施す自分、受け取る相手、差し出した贈り物のいずれにも固執しない「不可得(ふかとく)」の智慧が、すべての実践をとらわれのない自由な行いへと導きます。

六波羅蜜は、順序を追って一度で終わる階段ではなく、繰り返し巡り続ける歩みです。布施によって自らの執着に気づき、持戒で振る舞いを整え、忍辱で心を保ち、精進で歩みを続け、禅定で心を静め、般若で物事の実相を見抜く。日々の暮らしの中でこの巡りを重ねながら、智慧と慈悲をともに育てていきます。

真言宗の修行と六波羅蜜

身・口・意を整え、日々の供養に教えを重ねます。

弘法大師空海は『弁顕密二教論(べんけんみつにきょうろん)』で、顕教が説く六波羅蜜の歩みを、密教の「三密加持(さんみつかじ)」の修行へと深めました。三密とは、仏の身(身振り・印契)・口(真言・言葉)・意(心・瞑想)の働きです。修行者も自らの身・口・意を仏と響き合わせることで、この身のままでさとりを開く道(即身成仏)を歩みます。

また空海は『般若心経秘鍵(はんにゃしんぎょうひけん)』の中で、真言を心に念じ、口にとなえることが、心の根本的な迷い(無明)を払い、本来備わる清らかな心を開く実践であると示しました。経典の教理を学ぶことと、身・口・意を用いて自ら行ずることは、常に一つとして重なります。

寺院での修行だけでなく、お墓やご仏壇の前でも六波羅蜜を実践できます。仏前にお水や供物を供えるのは布施、仏具を磨いて掃除するのは持戒、枯れないよう手入れして供える生花は忍辱、毎日欠かさず供える仏飯やお膳は精進、立ち上る香りに心を澄ます線香は禅定、そして闇を照らす一本のロウソクの火は般若の象徴です。日々の小さなお参りの所作に六つの教えを重ね、仏前で整えた心を暮らしの中の人との関わりへと広げていきます。

六波羅蜜を説く原典

各波羅蜜の意味を、複数の経論の言葉から確かめます。経典(漢訳)と論書、律蔵の結偈を合わせて掲げました。

六波羅蜜全体を一節で

六波羅蜜全体:六つを一節で定義する

日本語訳
般若波羅蜜にとどまらない仕方で住し、捨てるところのない仕方で檀那波羅蜜を満たす。施す者、受ける者、そして財物はともに不可得であるから。罪と無罪も不可得であるから尸羅波羅蜜を、心が動じないから羼提波羅蜜を、身心を精進して懈らないから毘梨耶波羅蜜を、乱れず味わわないから禅那波羅蜜を、一切の法に著しないから般若波羅蜜を、それぞれ満たす。
原文
以不住法住般若波羅蜜中,以無所捨法應具足檀那波羅蜜,施者、受者及財物不可得故;罪不罪不可得故,應具足尸羅波羅蜜;心不動故,應具足羼提波羅蜜;身心精進不懈怠故,應具足毘梨耶波羅蜜;不亂不味故,應具足禪那波羅蜜;於一切法不著故,應具足般若波羅蜜。
解説
『摩訶般若波羅蜜経』は、六波羅蜜すべての「完成」を「不可得」という一点に結びつけて説きます。六つの実践は、執着を離れる智慧によって支えられ、一つの道として結ばれています。
出典
鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1(大正蔵8、218c)

布施

布施:相にとどまらずに

日本語訳
さらに、須菩提よ。菩薩は、あらゆる事物にとどまることなく布施を行うべきである。色にとどまらず、声・香・味・触・法にもとどまらずに布施する。須菩提よ、菩薩はこのように、相にとどまらずに布施すべきである。なぜなら、相にとどまらない布施の福徳は、はかりしれないからである。須菩提よ、どう思うか。東方の虚空ははかり知れるか。否、世尊よ。
原文
復次,須菩提!菩薩於法應無所住行於布施,所謂不住色布施,不住聲、香、味、觸、法布施。須菩提!菩薩應如是布施,不住於相。何以故?若菩薩不住相布施,其福德不可思量。須菩提!於意云何?東方虛空可思量不?不也,世尊!
解説
布施は、施す自分・受ける相手・差し出す物の三つへの執着を離れる智慧によって完成します。この「相にとどまらない布施(不住相布施)」がもたらす功徳の広大さは、果てしない大空にたとえられます。
出典
鳩摩羅什訳『金剛般若波羅蜜経』(大正蔵8、749a)

布施:慈育と四施

日本語訳
布施の完成とは何か。人物を慈み育て、あらゆる迷いを哀れみ、賢者を喜び、衆生を護り救い、天を越え地にわたって河海のように潤す。布施とは、飢えた者には食べ物を、渇いた者には飲み物を、寒い者には衣を、暑い者には涼を、病める者には薬を与えることである。
原文
布施度無極者,厥則云何?慈育人物,悲愍群邪,喜賢成度,護濟眾生,跨天踰地潤弘河海。布施眾生,飢者食之,渴者飲之,寒衣熱涼,疾濟以藥。
解説
三国時代の康僧会訳『六度集経』は、布施を慈悲にあふれる言葉で描き出します。物資の施与にとどまらず、教えを説き、不安を除くことまで、あらゆる救済がこの一体の施しに収められています。
出典
康僧会訳『六度集経』巻1(大正蔵3、1a)

持戒

持戒:罪・無罪を不可得とする

日本語訳
罪と罪でないことが不可得であるから、尸羅波羅蜜(持戒)を満たす。
原文
罪不罪不可得故,應具足尸羅波羅蜜。
解説
「戒を守った」「破ってしまった」という囚われを離れ、過ちや罪悪感に心を縛られない空の智慧によって、持戒は本来の清らかさを保ちます。
出典
鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1(大正蔵8、218c)

持戒:悪を止める定義

日本語訳
悪を止めて、また作さないこと。心に生じても、口に言っても、他から受けても、身・口の悪を息めること、これが戒の形相である。
原文
惡止不更作,若心生、若口言、若從他受,息身、口惡,是為戒相。
解説
『大智度論』は戒の本質を「悪を止め、重ねて作さないこと」と定義します。自らの身と口と心を整える内省の基準として戒を位置づけています。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻13(大正蔵25、154c)

持戒:善法の住処

日本語訳
たとえば大地には、形ある一切のものが依って住む。戒も同じであり、戒はすべての善法の住処である。
原文
譬如大地,一切萬物有形之類,皆依地而住;戒亦如是,戒為一切善法住處。
解説
大地がすべての草木を育むように、持戒はあらゆる善行が根を張る確かな基盤となります。戒を保つ穏やかな身の振る舞いが、他者への慈しみと深い智慧を宿す土壌となります。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻13(大正蔵25、153b)

忍辱

忍辱:心動ぜず

日本語訳
心が動じない故に、羼提波羅蜜(忍辱)を満たす。
原文
心不動故,應具足羼提波羅蜜。
解説
理不尽や侮辱に出会っても心を動揺させず、怒りに明け渡さないところに、忍辱の完成があります。
出典
鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1(大正蔵8、218c)

忍辱:生忍と法忍

日本語訳
羼提は、この国(秦)の言葉では忍辱という。忍辱には生忍と法忍の二種がある。菩薩は生忍を行じて無量の福徳を得、法忍を行じて無量の智慧を得る。
原文
羼提,秦言「忍辱」。忍辱有二種:生忍、法忍。菩薩行生忍,得無量福德;行法忍,得無量智慧。
解説
忍辱の実践を、人からの理不尽を受け流す「生忍」と、世の無常や苦難の道理を受け止める「法忍」の二つに深めます。法忍の修習は、物事の実相を見通す智慧へと通じています。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻14(大正蔵25、164b)

忍辱:第一の道

日本語訳
忍辱は第一の道であり、涅槃を仏は最上と称える。出家して他人を悩ませる者は、沙門とは呼ばれない。
原文
忍辱第一道,涅槃佛稱最,出家惱他人,不名為沙門。
解説
この偈は、過去仏である毘婆尸仏(びばしぶつ)が説いた波羅提木叉の結びとして伝わり、パーリ『法句経』第184偈にも対応します。怒りのままに他者を傷つけ苦しめる振る舞いを、修行の道から厳しく戒めています。
出典
仏陀跋陀羅・法顕訳『摩訶僧祇律』巻27(大正蔵22、446c);パーリ『法句経』第184偈

忍辱:怒りを加えない誓い

日本語訳
わたしは、湯の熱さや火の酷さ、塩漬けにされる患いを甘んじて受けるとも、怒りの毒を決して衆生に加えない。耐えがたきを耐えることこそ、あらゆる福の根本である。
原文
吾寧就湯火之酷、𦵔醢之患,終不恚毒加於眾生也。夫忍不可忍者,萬福之原矣。
解説
『六度集経』が描く忍辱は、どれほどの苦難を受けようとも決して怒りの毒を他に向けないという堅い誓いです。自らの心で怒りの連鎖を断ち切る強い覚悟を示しています。
出典
康僧会訳『六度集経』巻5(大正蔵3、24a)

精進

精進:身心を懈らず

日本語訳
身心を精進し、懈らない故に、毘梨耶波羅蜜(精進)を満たす。
原文
身心精進不懈怠故,應具足毘梨耶波羅蜜。
解説
精進の完成は、身と心を健やかに調えながら、弛みなく歩み続ける姿勢にあります。
出典
鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1(大正蔵8、218c)

精進:一切善法の本

日本語訳
精進が一切の善法の根本であるなら、最初に置かれるべきではないか。いま、どうして第四に置かれているのか。
原文
如精進是一切善法本,應最在初,今何以故第四?
解説
[問い]なぜ精進は四番目に置かれるのか。[答え]布施・持戒・忍辱の善行を深め、禅定という智慧の門へと進むためには、倦むことのない精進がその歩みを貫いていなければならないからです。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻15(大正蔵25、172a)

精進:道に留まる

日本語訳
精進の完成とは何か。道の奥義に心を留め、進んで怠ることがない。臥し、坐し、行き、歩く、その間も、息の合間さえも絶えない。
原文
精進度無極者,厥則云何?精存道奧,進之無怠,臥坐行步,喘息不替。
解説
立つときも座るときも、呼吸の合間にさえ教えの道を心に留める日常の持続として精進を描きます。進むべき方向を見失わずに、確かな歩みを重ねていく力です。
出典
康僧会訳『六度集経』巻6(大正蔵3、32a)

禅定

禅定:乱れず味わわず

日本語訳
乱れず、味わわない故に、禅那波羅蜜(禅定)を満たす。
原文
不亂不味故,應具足禪那波羅蜜。
解説
禅定の完成は、心の散乱を静めること(不乱)に加え、瞑想の心地よさや静寂そのものに耽溺しないこと(不味)にあります。静けさへの執着すらも手放していきます。
出典
鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1(大正蔵8、218c)

禅定:智慧を守る燈

日本語訳
たとえば燈火は、照らす力があっても大風の中では用をなさない。密やかな室に置けば、その働きは全うされる。散乱した心の智慧も同じで、禅定という静かな室がなければ、智慧があっても働きは完全にならない。
原文
譬如然燈,燈雖能照,在大風中不能為用;若置之密宇,其用乃全。散心中智慧亦如是,若無禪定靜室,雖有智慧,其用不全。
解説
禅定は、散乱した心が落ち着きを取り戻し、備わっている智慧が本来の働きを全うするための静かな部屋です。定(静けさ)が整ってこそ、慧(智慧の明かり)が十分に照らします。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻17(大正蔵25、180c)

禅定:智慧を欠けば坏瓶

日本語訳
禅定があっても智慧がなければ、焼いていない土器のようなものである。実相の智慧を得れば、焼かれた土器のように、菩薩の今生と後生の無量の功徳を保ち、菩薩もそれによって渡り、仏に至ることができる。
原文
禪定無智慧,亦如坏瓶;若得實相智慧,如坏瓶得火燒成熟,能持菩薩二世無量功德,菩薩亦因之而度得至佛。
解説
智慧の伴わない禅定は、火で焼かれていない脆い土器のようなものです。物事の真実を見る智慧の炎で焼き固められて初めて、無量の功徳を湛える器となります。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻28(大正蔵25、269b)

禅定:心を端し意を一つに

日本語訳
禅定の完成とは何か。心を端し、意を一つにし、もろもろの善を合わせて心の内に納め、心のさまざまな穢れを、善をもって消し去ることである。
原文
禪度無極者云何?端其心,壹其意,合會眾善,內著心中,意諸穢惡,以善消之。
解説
禅定とは、直らかな心で善なる思いを集め、心の穢れや迷いを善の力で消し去っていく修習です。
出典
康僧会訳『六度集経』巻7(大正蔵3、39a)

般若

般若:一切法に著せず

日本語訳
一切の法に著しない故に、般若波羅蜜を満たす。
原文
於一切法不著故,應具足般若波羅蜜。
解説
般若の完成は、どのような事物や概念にもとらわれない、無執着の智慧として示されます。
出典
鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1(大正蔵8、218c)

般若:諸仏の母

日本語訳
般若波羅蜜は、すべての仏の母である。般若波羅蜜は、世間のあり方を示す。
原文
般若波羅蜜是諸佛母;般若波羅蜜能示世間相。
解説
般若は、布施や持戒が新たな執着や慢心を生むのを防ぎ、行いを内側から導く智慧です。あらゆる仏を育む根源であることから「諸仏の母」と尊ばれます。
出典
鳩摩羅什訳『大智度論』巻70(大正蔵25、549b)

般若:色即是空

日本語訳
舎利子よ。色は空と異ならず、空は色と異ならない。色はすなわち空であり、空はすなわち色である。受・想・行・識もまた、同じである。
原文
舍利子!色不異空,空不異色,色即是空,空即是色;受、想、行、識,亦復如是。
解説
『般若心経』のこの名句は、目に見える形あるもの(色)が固定した実体としてあるのではなく、あらゆる因縁の関わり合いによって立ち現れている(空)という、縁起の真理を指し示しています。
出典
玄奘訳『般若波羅蜜多心経』(大正蔵8、848c)

関連する読みもの

六波羅蜜の学びを、平等寺の信仰や季節の実践へつなげます。

  • お彼岸と波羅蜜

    此岸から彼岸へ。お彼岸の法会と供養に込められた六波羅蜜の心をひもときます。

    読む→
  • 本尊薬師如来

    波羅蜜の実践が、平等寺の本尊への祈りとどのようにつながるかを確かめます。

    読む→
  • 平等寺の歴史

    六波羅蜜の教えが受け継がれてきた土台として、平等寺の歴史をたどります。

    読む→
参考文献

参考文献

各節の典拠と、さらに読み進めるための経論・空海の著作・研究論文です。大正蔵の数字は巻と頁を、a・b・cは上・中・下段を示します。

六波羅蜜全体と般若の関係

鳩摩羅什訳『摩訶般若波羅蜜経』巻1「習応品第三」(大正蔵8、No.223、218c)。六つの波羅蜜を一節で説き、施者・受者・財物の不可得と、諸法に執着しない智慧を結びます。 本文を読む
鳩摩羅什訳『大智度論』巻34(大正蔵25、No.1509、314a–b)。般若を「諸仏の母」と説き、他の五つの実践が般若によって波羅蜜となる理由を論じます。 本文を読む

布施:執着を離れ、相手を支える

鳩摩羅什訳『金剛般若波羅蜜経』(大正蔵8、No.235、749a)。色・声などにとどまらずに施す「不住相布施」と、その功徳を虚空にたとえる問答。 本文を読む
康僧会訳『六度集経』巻1「布施度無極章」(大正蔵3、No.152、1a)。飢え・渇き・寒暑・病に応じて施すという、本文の具体的な布施の説明の出典。 本文を読む
曇無讖訳『優婆塞戒経』巻4「雑品第十九」(大正蔵24、No.1488、1054c)。正しく得た物を施すこと、少ない物でも施すこと、見返りを求めず敵にも親しい人にも施すことを説きます。 本文を読む
実叉難陀訳『大方広仏華厳経』巻58「離世間品第三十八」(大正蔵10、No.279、304c–305a)。十種の布施を説く箇所。相手に利益をもたらす施しと、施者・受者・施物の三輪清浄をあわせて読みます。 本文を読む

持戒:善行の基盤と自らの省察

鳩摩羅什訳『大智度論』巻13(大正蔵25、No.1509、153b–c・154c)。戒を善法の住処である大地にたとえる箇所と、「悪を止めて重ねて作さない」という戒の定義。 本文を読む
般若訳『大乗理趣六波羅蜜多経』巻5「浄戒波羅蜜多品第六」(大正蔵8、No.261、886c–887a)。他者に持戒を勧める前に、自らの身を点検して放逸を離れるよう説きます。 本文を読む
曇無讖訳『菩薩地持経』巻4「戒品」(大正蔵30、No.1581、910a)。菩薩地の修行論。正しく戒を受け、過ちがあれば悔い改め、念を保って戒を守る四つの要点。 本文を読む

忍辱:生忍・法忍と報復を離れる実践

鳩摩羅什訳『大智度論』巻14・15(大正蔵25、No.1509、164b・168b)。生忍と法忍の区別。人から害を受けても悪心を起こさないことと、諸法の空を観ずる法忍を説きます。 本文を読む
康僧会訳『六度集経』巻5「忍辱度無極章」(大正蔵3、No.152、24a–b)。苦難の中でも怒りの毒を衆生に加えないという誓い。 本文を読む
仏陀跋陀羅・法顕訳『摩訶僧祇律』巻27(大正蔵22、No.1425、446c)。毘婆尸仏の波羅提木叉として伝える「忍辱第一道」の偈。本文の「他人を悩ませない」の出典です。 本文を読む
求那跋摩訳『菩薩善戒経』巻5「菩薩地忍品」(大正蔵30、No.1582、986b–c)。菩薩地の修行論。打ち返し、言い返す力があっても報復を選ばない「難忍」を説きます。 本文を読む
玄奘訳『大般若波羅蜜多経』巻566「第六分通達品第二」(大正蔵7、No.220、923b–c)。内忍・外忍・法忍を説き、身分や親疎によって忍ぶ相手を選ばないことを示します。 本文を読む

精進:善を育てる方向と持続

鳩摩羅什訳『大智度論』巻15(大正蔵25、No.1509、172a–b)。精進が善法の根本でありながら、六波羅蜜の第四に置かれる理由を問う問答。 本文を読む
康僧会訳『六度集経』巻6「精進度無極章」(大正蔵3、No.152、32a)。臥す・坐す・歩く日々の動作の中で、道を忘れず怠らない実践。 本文を読む
般若訳『大乗理趣六波羅蜜多経』巻7「精進波羅蜜多品第八」(大正蔵8、No.261、895c)。未生の悪を防ぎ、既生の悪を除き、未生の善を起こし、既生の善を育てる四種精進。 本文を読む
玄奘訳『瑜伽師地論』巻42「菩薩地・精進品」(大正蔵30、No.1579、525c)。善法を受け入れ、人々を利益して安楽にする心と、そこから起こる身・語・意の働きを精進とします。 本文を読む

禅定:定慧をともに修め、衆生を捨てない

鳩摩羅什訳『大智度論』巻17(大正蔵25、No.1509、180b–c)。静かな場所に坐しても衆生を捨てない菩薩の禅定と、智慧を守る燈火の譬え。 本文を読む
鳩摩羅什訳『大智度論』巻28(大正蔵25、No.1509、269a–b)。陀羅尼と三昧の関係を論じる文脈で、智慧のない禅定を未焼成の土器にたとえます。 本文を読む
康僧会訳『六度集経』巻7「禅度無極章」(大正蔵3、No.152、39a)。心を正し、意を一つにして、諸善を心に集める禅の説明。 本文を読む
般若訳『大乗理趣六波羅蜜多経』巻8「静慮波羅蜜多品第九」(大正蔵8、No.261、900a–b)。衆生を生死から救い出す願いと結びついた静慮波羅蜜多。 本文を読む
玄奘訳『瑜伽師地論』巻43「菩薩地・静慮品」(大正蔵30、No.1579、527b–c)。教えを聞き思惟することを前提に、止・観・止観双運を菩薩の静慮として説きます。 本文を読む

般若:空・無自性と諸仏の母

玄奘訳『般若波羅蜜多心経』(大正蔵8、No.251、848c)。五蘊皆空と、色・受・想・行・識それぞれを空と説く箇所。 本文を読む
玄奘訳『解深密経』巻4「地波羅蜜多品第七」(大正蔵16、No.676、707b)。般若が諸法の無自性を捉えることと、それを説く言葉の役割を論じます。 本文を読む
鳩摩羅什訳『大智度論』巻70(大正蔵25、No.1509、549b)。本文の「般若波羅蜜は諸仏の母」「世間の相を示す」の引用箇所。同論中に掲げられた経文です。 本文を読む
般若訳『大乗理趣六波羅蜜多経』巻9「般若波羅蜜多品第十」(大正蔵8、No.261、908a–b)。善き友から正法を聞くことにより般若が生じ、三世の諸仏も般若から生まれると説きます。 本文を読む

空海の著作と真言宗の修行

空海『弁顕密二教論』巻上(大正蔵77、No.2427、374c)。顕教の六度と密教の三密門を対照する冒頭の一節。真言宗の節の出典。 本文を読む
空海『般若心経秘鍵』(大正蔵57、No.2203A、12b)。「真言不思議、観誦無明除」の偈。般若心経を真言の観誦と即身の証悟に結びつけます。 本文を読む
空海『即身成仏義』(大正蔵77、No.2428、381c・383a–b)。六大・四曼・三密と即身成仏の関係を説く論書。本文の三密加持の説明をあわせて読むために。 本文を読む

成立・語義を考える研究論文

平川彰「六波羅蜜の展開」(『印度學佛教學研究』21巻2号、1973年、530–542頁)。六波羅蜜の成立と展開、般若波羅蜜との関係を論じます。 本文を読む
阿理生「pāramitā(波羅蜜)の語源・語義について」(『印度學佛教學研究』54巻2号、2006年、1011–1005頁・1340頁)。「到彼岸」「完成」などの語源解釈を再検討する論文。本文の語義説明を考えるために。 本文を読む
平川彰「般若経と六波羅蜜経」(『印度學佛教學研究』19巻2号、1971年、584–592頁)。般若経と六波羅蜜を説く経典群を比較し、菩薩の実践と経典受持の関係を考察します。 本文を読む

平等寺オンライン

祈りと学びの入口

お参り、祈願、仏教を学ぶ時間へ。目的に合わせてお進みください。

ライブ配信祈願を申し込む平等寺
参拝・配信

参拝・配信

ライブ配信瑞喜(ZUIKI)お経の練習をする写経奉納絵馬奉納
祈り・供養

祈り・供養

法会一覧護摩祈祷のお申し込み授与品一覧祈願を申し込むAñjali - いまここで祈るDāna
学ぶ・読みもの

学ぶ・読みもの

平等寺を知る読みもの平等寺各種お次第特別法会
平等寺・参拝案内

平等寺・参拝案内

平等寺について交通アクセス参拝案内ライブ配信
相談・お問い合わせ

相談・お問い合わせ

住職に質問するこれまでにあった質問への答えお問い合わせ個人面談の予約おたよりを送る
すべてのページを見る

平等寺を知る

平等寺の歴史平等寺由来記平等寺の本尊 薬師如来持仏堂本尊 十一面観音毘沙門天地蔵菩薩不動明王親子二人の箱車

読みもの

平等寺吉凶暦縁日大全がん封じ(癌封じ)についてたくさんの仏さまがいる理由逆修供養開経偈について修験道とは何か入仏三摩耶について越三摩耶についてきゅうり加持について全国のきゅうり加持 実施寺院一覧十一面観音について毘沙門天について地蔵菩薩について不動明王について薬師如来について理趣経について準備中露地の偈(聞鐘偈)についてキャッシュレス賽銭準備中はじめての四国遍路四国八十八ヶ所 札所一覧

平等寺

平等寺について交通アクセス参拝案内

各種お次第

朝夕勤行次第金剛界禮讃胎蔵界禮讃仏前勤行次第西国三十三所巡礼次第食事作法次第

特別法会

新春特別護摩祈祷焼八千枚供お彼岸の意味と供養お盆供養法会きゅうり加持縁日薬師増益護摩日曜薬師増益護摩

イベント一覧

トップページ東海講会高野山講会2023西国巡礼2024#1西国巡礼2024#2西国巡礼2025 結願の旅四国遍路ツアー 2026四国遍路ツアー 2026 第2回

コミュニティ

平等寺 参拝ガイドライン平等寺 撮影・SNS投稿ガイドラインコミュニティ・ガイドライン参拝者によるコンテンツ配信ガイドラインDiscord平等寺サーバー平等寺Notion

そのほかのページ

ライブ配信法会一覧護摩祈祷のお申し込み授与品一覧瑞喜(ZUIKI)お経の練習をする写経奉納絵馬奉納オンライン四国遍路住職に質問するこれまでにあった質問への答えお問い合わせ個人面談の予約おたよりを送る供物を送る祈願を申し込むAñjali - いまここで祈る寺報『soten』Dāna福徳 HukTok寺で手作りする祈祷済みのしめ飾り竹曼荼羅平等講随喜・念誦ポイントのランキング