総説・原典根拠版

縁日大全

仏の縁日は、なぜその日なのか

お寺の掲示板やカレンダーで「今日は◯◯さまの縁日」と見かけます。縁日とは、その仏さまとご縁を結びやすいとされる日のことです。毎月めぐってくるものが中心で、薬師は8日、観音は18日、地蔵は24日、不動は28日、釈迦は30日。ほかにも、暦の決まりや月の満ち欠け、祖師(宗派を開いた高僧)の命日にちなむものなど、由来の違ういくつかの種類があります。本稿はまず縁日の成り立ちを五つの系統に分けて総論で説き、続いておもな仏さまごとの縁日を各論で一尊ずつたどります。日づけがなぜその日なのかを、経典の原文までさかのぼって確かめる総説です。

第一部 総論

縁日は、なぜ「あえて」日を選ぶのか

縁日は、もともとの仏教にはありませんでした。お釈迦さまは、日の善し悪しや星まわりで行いを決めることを、迷いとして退けています。それでも縁日があるのは、人々がもともと持っていた暦のリズムに、仏の教えを重ねていったからです。決まった日を「身を慎む日」「仏とご縁を結ぶ日」として活かす。これは人を導くための手だて(方便ほうべん)です。

ですから縁日には、日の決め方(原理)がいくつも併存します。どれが正統でどれが傍流ということはなく、いずれも本来は仏教の外にあった暦に、仏の信仰を結びつけたものです。以下では、斎日さいにち三十日秘仏さんじゅうにちひぶつ干支えと月待つきまち日待ひまち祖師そしや神祇のゆかりの日、という五つの順に、それぞれの原理と経典の根拠を見ていきます。

縁日の五つの系統

仏教は本来、日に吉凶を立てないそれでも、人々の暦に信仰を重ねて「縁日」を立てた(方便)
縁日(仏とご縁を結ぶ特別な日)
日の決め方には、五つの系統があります。
1斎日六斎日・十斎日に仏を配する
2三十日秘仏30日に仏を配し、毎月の縁日へ
3干支十二支で日を決める
4月待・日待月の出を待って祈る
5ゆかりの日祖師・高僧の命日
縁日は、仏とご縁を結ぶ特別な日です。その日づけの決め方には、斎日・三十日秘仏・干支・月待や日待・ゆかりの日(祖師や高僧の命日)という五つの系統があります。

第二部 各論

おもな仏さまの縁日

ここからは、おもな仏さまごとに縁日の由来を一尊ずつ見ていきます。まず毎月の縁日早見表を掲げ、続いて如来・菩薩・明王・天部・祖師神祇の順に、それぞれの日づけがどの系統に属すかを示しながらたどります。

数字が語ること

佛法中、日無好惡
仏法においては、日に好悪はない(『大智度論』巻十三)

縁日の数字を、五つの系統に沿って経典の原文までたどり、おもな仏さまごとに一尊ずつ確かめてきました。これらの数字は確かに仏教と関係していますが、関係のかたちは一つではありません。斎日は布薩にはじまり経典に深く根ざした最古層、十斎日仏は各日に仏を配した層、三十日秘仏は中国から日本へ広がった習俗の層、干支と月待はそれぞれ暦と月の信仰の層、そして祖師・神祇の縁日は命日に由来する別枠です。

24日の地蔵は経典に最も深く裏づけられた尊、28日の不動は日本の風土で大日の化身として重ねられた尊、21日の大師は命日に由来する別系統の縁日。どれも同じ仏教のいとなみのなかにありますが、由来と確かさはそれぞれ異なります。

決まった日に身をつつしみ善を積むのは、人を善へ導くための方便であって、日そのものに吉凶があるからではありません。縁日とは、その方便を千年にわたって受け継いできた、仏とご縁を結ぶ営みの跡なのです。どうぞ、お近くのその日に、静かに手を合わせてみてください。

合掌

平等寺(四国八十八ヶ所霊場 第二十二番)