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お布施とは

お布施って、なんだろう?

お布施は、心をひらいて、自分のものを少しだけ分かち合うことです。お金だけの話ではありません。ここでは、はじめての方に向けて、お布施の意味をやさしく一つずつ見ていきます。

はじめての方へ

お布施の意味を、やさしく五つのステップでたどります

お布施のもとの意味、料金ではない理由、三つのかたち、心の向き、お寺との関わり。はじめの方がつまずきやすい順に並べています。

1

はじめに

分かち合い

お布施は、自分のものを少しだけ、だれかのために差し出すこと。それが中心にあります。

2

受け取り方

読経の代金ではない

法要で包むお金も、代金というより、仏さまへの感謝と、法会の場を支える気持ちのかたちです。

3

三つのかたち

お金・教え・安心

お布施にはお金や物だけでなく、教えを伝えることも、こわさをやわらげることも含まれます。

4

心の向き

見返りを求めない

「これだけ出したらこれだけ返ってくる」という計算を、少しずつ手放していくことが大切にされてきました。

5

お寺と

法会を外から支える

お寺へのお布施は、何かを買う行いではなく、法会や祈りの場を外から支える参加のしかたです。

1

はじめに

お布施は、自分のものを少し分けて、人を恵むことです

お布施ということばは、もとは「分け、恵む」という意味です。自分のものを、ほんの少し、だれかのために差し出す。それがお布施のはじまりです。

運心普及称之為布 輟己恵人故名為施
心を広く運ぶことを「布」といい、自分のものを割いて人を恵むことを「施」という

ここでいう「もの」は、お金だけとは限りません。食べ物でも、時間でも、手間でも、ことばでもよいのです。大切なのは、抱え込む気持ちを少しゆるめて、だれかのために差し出すことです。

ですから、お布施を法要の場で包むお金だけのことと受け取ると、少し狭く感じます。お布施ということばは、もっと広く、だれかのために自分のものを分け合う行いを指しています。

法要のときに包む金額も、そうした行いのひとつです。ただ、その中心は金額そのものではなく、だれかのために差し出し、支えることにあります。

お経や注釈のことば

むかしのお坊さんの言葉

日本語訳
一つには布施。心を広く運ぶので「布」といい、自分のものを割いて人を恵むので「施」という。
原文
一者布施。 運心普及稱之爲布。 輟己惠人故名爲施。
解説
鎌倉時代のお坊さんが、お布施ということばを「布」と「施」の二字に分けて、やさしく説いた一節です。
出典
『観経疏伝通記』「玄義分」J02_0122A15(良忠撰)

お釈迦さまのことば(パーリ語)

日本語訳
与える者には、功徳が増していく。つつしむ者には、怨みが積もらない。
原文
Dadato puññaṃ pavaḍḍhati, saṃyamato veraṃ na cīyati.
解説
お布施ということばのいちばん古い姿です。お釈迦さまが思わず口にしたとされる短い偈で、「与えること」と「功徳」のつながりを、やさしく示しています。
出典
『ウダーナ』(感興のことば)KN 3; 同偈は『長部』DN2 ほかにも伝わる

多言語のことば

解説
日本語の「布施」のもとになったインドの言葉は dāna(ダーナ)、チベット語では sbyin pa(ジンパ)。いずれも「与えること」「分かち合うこと」を意味します。英語の donation や donor も、同じ語根から来ています。
出典
サンスクリット dāna・パーリ dāna・チベット sbyin pa
2

三つのかたち

お布施は、お金・教え・安心という三つのかたちをもっています

お布施は、お金や物を分けることだけではありません。教えを伝えることも、こわい気持ちをやわらげることも、お布施に含まれます。大きく分けて、三つのかたちがあります。

二施之中 法施為勝
お金のお布施と、教えのお布施。この二つのうち、教えのほうが勝れている

ひとつめは、食べ物やお金、品物を分けること。これを「財施」と呼びます。ふたつめは、道しるべになるような教えやことばを手渡すこと。これを「法施」と呼びます。みっつめは、不安な人に寄り添って、こわさをやわらげること。これを「無畏施」と呼びます。

こうして並べてみると、お布施がお金だけの話ではないことが見えてきます。お寺で包むお金は財施ですが、法話を聞いて、学びを次の人に伝えることは法施です。困っている人にそっと寄り添って安心を渡すことは、無畏施になります。

昔のお坊さんは、三つのうち「教えのお布施」を大切に語りました。物の助けはもちろん尊く、そのうえで、教えや安心のはたらきは長く続き、人の生き方を深く支えるからです。

お経や注釈のことば

三つの布施のはたらき

日本語訳
財施とは、きちんと得た物で、すぐれたものを人に施すこと。無畏施とは、獅子や虎狼などの恐れから人を救い抜くこと。法施とは、道理にかなった法を説き、学びをすすめること。
原文
財施者、謂以上妙清淨如法財物而行惠施。 無畏施者、謂濟拔師子虎狼鬼魅等畏。 法施者、謂無倒説法、稱理説法、勸修學處。
解説
三つのかたちを、具体例でわかりやすく示したお経の一節です。
出典
『瑜伽師地論』T30n1579

「教えのお布施」の尊さ

日本語訳
仏さまが説かれたように、二つの施しのうち、法施が勝れている。お金の布施には量があるが、教えの布施には量がない。お金の布施には尽きるときがあるが、教えの布施には尽きることがない。
原文
如佛所言、二施之中、法施為勝。 財施有量、法施無量。 財施有盡、法施無盡。
解説
物を分けることももちろん大切。そのうえで、教えが長く人を支えるという見方を示しています。
出典
『大智度論』T25n1509, p.144c09-28

無畏施の姿(パーリ語)

日本語訳
聖なる弟子は、はかり知れない生きものたちに、「恐れのなさ」を与え、「怨みのなさ」を与え、「害のなさ」を与える。
原文
ariyasāvako aparimāṇānaṃ sattānaṃ abhayaṃ deti, averaṃ deti, abyābajjhaṃ deti.
解説
お釈迦さまの時代から伝わる「無畏施」の姿です。誰かを安心させること、怨みを抱かせないこと、傷つけないこと。これも立派なお布施だと示されています。
出典
『増支部』Aṅguttaranikāya 8.39(五大施)
3

心の向き

お布施には、値段がありません

お布施は、「これだけ払ったから、これだけもらえる」という交換ではありません。抱え込む気持ちを、少しずつほどいていく。そのこと自体が、お布施の中心に置かれてきました。

菩薩於法、應無所住行於布施
菩薩は何ものにも執着せずに布施を行う

『金剛般若波羅蜜經』という有名なお経には、「与える人・受ける人・与える物、そのどれにも執着せずに布施しなさい」とあります。「善いことをした自分」にしがみつかない、という心の向きです。

もう少しくわしいお経には、清らかなお布施のすがたが十挙げられていて、その最後のほうに「恩返しを望まない布施」「来世の果報を願わない布施」が出てきます。見返りを計算するほど、お布施はそのすがたを失いやすい、ということです。

もちろん、功徳がないという意味ではありません。むしろ功徳は、取引のように握りしめたときよりも、手放した先で、人が安らぎ、法が次に続いていくときに、自然とあらわれるものとして受け止められてきました。

お経や注釈のことば

執着せずに布施する

日本語訳
菩薩は、何ものにもとらわれずに布施を行いなさい。目に見えるものにとらわれず、音・香り・味・手ざわり・考えにもとらわれずに布施する。須菩提よ、菩薩はこのように、すがたに執着せずに布施しなさい。
原文
菩薩於法、應無所住行於布施。 所謂不住色布施、不住聲、香、味、觸、法布施。 須菩提、菩薩應如是布施、不住於相。
解説
お布施を値段や交換として固定しないための、お経のもっとも有名な言葉です。
出典
『金剛般若波羅蜜經』「妙行無住分第四」T08n0235, p.749a(鳩摩羅什訳)

見返りを願わない布施

日本語訳
清らかな布施の十のすがた。九つめは、恩返しを望まない布施。十は、将来の果報を願わない布施。
原文
清淨施十相。 九、不望報恩施。 十、不希異熟施。
解説
見返りや将来のご利益を計算しないこと。これを清らかさの条件としてはっきり挙げています。
出典
『瑜伽師地論』T30n1579, p.510a16-20

施して、報いを求めない

日本語訳
施しても、報いを求めない。
原文
施不求報。
解説
短いけれど、お布施の心の向きをまっすぐに伝える一節です。
出典
『大智度論』T25n1509

金剛般若経のサンスクリット原文

日本語訳
スブーティよ、さらにまた、菩薩はこのような布施(dāna)と捨離(parityāga)を、すべての生きもののために行うべきである。
原文
api tu khalu punaḥ subhūte bodhisattvena evaṃrūpo dānaparityāgaḥ kartavyaḥ sarvasattvānām arthāya.
解説
漢訳のもとになった『金剛般若経』のサンスクリット原文です。お布施は、自分のためではなく「すべての生きもののために」行うものとして示されています。
出典
Vajracchedikā Prajñāpāramitā(金剛般若波羅蜜経)サンスクリット写本
4

お寺と

お寺へのお布施は、祈りと学びの場を、外から支える参加です

お寺に差し出すお布施は、お坊さんへの代金でも、読経への支払いでもありません。むかしから、法会や修行の場を外から支える参加のしかたとして受け継がれてきました。

一外護知識者檀那也 不論在家出家 供給所須無乏少
修行を外から護るよき友とは檀那のことで、在家か出家かを問わず、必要なものを欠けなく支える

「旦那(だんな)」「檀那(だんな)」ということば、どこかで聞いたことがあるかもしれません。もともと、お布施をする人のことを指した仏教語です。お寺を支える人は、ただの支払者ではなく、修行と法会を外から護る人として受け止められてきました。

空海さまの流れを汲むお坊さんは、「檀」ということばを十ある菩薩の行の最初に置き、大きな思いやりの実践として説きました。同時に、檀那から届けられたものは、お坊さんたちが用いて、道場と修行をささえる具体的なはたらきになる、とも伝えられてきました。

ですからお寺へのお布施は、建物や仏具の維持だけを意味しません。法要を続けること、法話を届けること、祈りの場を保つこと、来られない人にも縁を開いていくこと。そうしたはたらき全体を、未来へ渡していく支えとして受け止められます。

お経や注釈のことば

檀那は、修行を外から護る人

日本語訳
一つに、外から護るよき友とは檀那のことである。在家か出家かを問わず、必要なものを届けて、欠けることがないようにする。
原文
一外護知識者檀那也。 不論在家出家、供給所須無乏少。
解説
お寺へのお布施を「外から護る」という言葉で受け止めた、日本のお坊さんの一節です。
出典
『念仏三心要集』J10_0392B31(弁長述)

お坊さんが用いて、修行を支える

日本語訳
ちょうど、お坊さんたちが檀那から届いたものを用いて暮らすようなものである。右手の五指は、檀・戒・忍・進・禅という菩薩の五つの行にあたる。
原文
如衆僧受用檀越所施之物也。 右五指ハ檀戒忍進禪、五波羅蜜也。
解説
お布施が、日々の修行と菩薩の行の、両方を支えていることを示す一節です。
出典
『妙印鈔』T2213, 第58巻

施しの心は、芽が出るように

日本語訳
ふと食を節して、たびたびお布施をする。施しの心が芽ぐむのは、穀の種が縁にふれて芽吹くようなもの。
原文
欻爾節食 數數檀那。 施心萌動 如穀遇縁。
解説
弘法大師空海さまが、お布施をする心の始まりを、穀の種が芽吹く姿にたとえた一節です。
出典
『秘蔵宝鑰』「第二愚童持齋心」T77n2426, p.363b(空海撰)
5

平等寺オンライン

オンラインでのお布施も、配信料ではなく、場を支えるためのものです

配信やオンラインでの参加は、かたちとしては新しいものです。けれど、そこで起きていることは、教えにふれ、場を支え、離れた人に縁を開くという、お布施そのもののはたらきです。

輟己恵人 故名為施
自分のものを割いて、人を恵む。だから「施」という

オンライン法要のお布施を、ただの配信料と見てしまうと、本来のお布施のすがたから離れてしまいます。じっさいには、法会が続き、祈りの時間が保たれ、遠方の方にも仏縁が開かれていく。その支えとして受け止めていただけると、ぴったり合います。

もちろん、現地で手を合わせる尊さが失われるわけではありません。来られる方は足を運び、来られない方にも配信やオンライン参加の縁を開く。そのどちらも成り立つように支えるものとして、お布施を位置づけています。

平等寺オンラインで受け付けているお布施も、同じ姿勢でお預かりしています。ご浄財やお供えは、画面越しのサービスを買うためではなく、薬師如来さまへの祈りの場を支え、教えにふれる機会を未来へつなぐためのお布施として、お届けいただければと思います。

お経や注釈のことば

布施の本質は、心のはたらき(サンスクリット)

日本語訳
もし世界を貧しさのないものにすることが布施波羅蜜ならば、いまも世界には貧しさがあるのに、昔の仏さまがたの布施波羅蜜はどうやって完成したというのか。/すべてを成果ごと人々に手放す心のはたらきによって、布施波羅蜜と言われる。だから布施波羅蜜とは、ただ心そのものなのである。
原文
adaridraṃ jagatkṛtvā dānapāramitā yadi, jagaddaridramadyāpi sā kathaṃ pūrvatāyinām. (5.9) phalena saha sarvasvatyāgacittāj jane 'khile, dānapāramitā proktā tasmāt sā cittam eva tu. (5.10)
解説
8世紀インドの僧シャーンティデーヴァが、『入菩提行論』で立てた有名な問答です。「布施波羅蜜とは、物をすべて与えつくすことではなく、手放そうとする心そのもの」。場所の遠さに関わらず、心のはたらきとしてのお布施はたしかに成り立つ、ということを教えてくれます。
出典
『入菩提行論』Bodhicaryāvatāra 5.9-5.10(シャーンティデーヴァ著・チベット訳 Toh 3871)

よくある誤解

よく取り違えられる点

  • お布施はサービスの料金ですか?

    お布施は、法にふれた感謝と、お寺や法会を外から支える行いです。お寺が「読経の代金ではありません」とお伝えするのは、もとの意味に戻ってお受けするためです。

  • 少額だと失礼でしょうか?

    大切にされてきたのは、金額そのものよりも、分かち合う気持ちと、無理のない実践です。ご自身にとって無理のない範囲でお包みいただければ、それが素直なお布施のすがたになります。迷うときは、抱え込まずにお寺へご相談ください。

  • お金以外にも布施はありますか?

    あります。仏教では、財施だけでなく、教えを伝える法施と、相手のこわさをやわらげる無畏施までが布施です。ことば、気づかい、安心できる場づくりも、お布施のひとつのすがたになります。

  • オンライン参加のお布施にも意味はありますか?

    あります。配信を支え、遠方の方にも法要への縁を開き、祈りの場を続けていくことは、現代における外護のひとつです。現地参拝の尊さはそのままに、来られない方にも縁を開くための参加として受け止められます。

次の一歩

意味がつかめたら、平等寺のお布施をご覧ください

ここでお伝えしたお布施のかたちを踏まえたうえで、ご本尊・薬師如来さまへのご浄財やお供えをお届けいただけます。無理のない範囲で、どうぞご参加ください。

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